元ドン ペリニヨンの巨匠が挑むSAKE of JAPAN

IWA 5

Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は10月号より、「IWA 5」をご紹介。数十種類の原酒をブレンドしてつくるユニークな製法と多層的な味わいの1本だ。


日本酒好きの間で最近交わされている「ねえ、もうアレ飲んだ?」という言葉。注目の的となっているのが、このIWA 5だ。なぜか? それはこの酒があるフランス人によってつくられたからだ。いまは外国人の蔵人も珍しくない? 然り。ただ、彼があのドン ペリニヨンの醸造最高責任者を28年にわたって務めたリシャール・ジョフロワだと知ればどうだろう。がぜん、気になるのではなかろうか。

ジョフロワ氏は90年代に初訪日。以来数十回に及ぶ訪問の折に日本酒を知り、徐々にその磁力に惹かれていったのだと話す。

「日本酒とシャンパーニュは米とブドウという自然から生まれるプロダクトであること、発酵が大切な役割を果たしていることなど多くの共通点があります。一般に日本酒はまず香りで味わうことが多いように思いますが、私の目指した日本酒は、ワインでいうところのパレット(味わい)に力点を置いたもの」というIWA 5。その最大の特徴は、5種の酵母と、山田錦と雄町、五百万石という3種の酒米から成る数十種類の原酒をブレンドしてつくるユニークな製法と、そのブレンドから生まれる多層的な味わいにあるだろう。

「米はブドウよりも生育地域が広く、世界ではよりユニバーサルな存在です。つまり日本酒にはまだまだポテンシャルがある。私のお酒が日本を飛び出し、まずアジアへ、やがて世界へ旅する日も近いでしょう」

ユニバーサルという哲学はこのボトルデザインにも現れているだろう。なめらかな質感の漆黒のボトルはデザイナー、マーク・ニューソンの手によるもの。書道家、木下真理子とアートディレクター、中島英樹のコラボレーションにより生み出された書は、モノクロームながら、静と動のコントラストを鮮やかに際立たせる。

「黒と白って日本の美意識ですよね。このボトルを見たとき、『鮨m』の風景に映えるなと思いました」と語るのは「鮨m」(東京・南青山)の共同オーナー、木村好伸氏だ。

「IWA 5は温度によって酸が印象を変える表情豊かな酒。私は-7℃から58℃まで7種の温度帯で試しましたが、そのどれもがそれぞれ魅力的でした。和食に限らずいろんな料理と合わせることでそのチャームが引き出されるお酒だと思います」

日本酒という千年に渡って続く我々の文化が、ジョフロワ氏の叡智を得てどこへ向かうのか。ボトルに記されたSAKE of JAPANという言葉が彼のデスティネーションを示している。

IWA 5


容量 
720ml
度数 16度
価格 13000円(税別、参考小売価格)
問い合わせ 株式会社白岩 iwa-sake.jp
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photographs by Yuji Kanno text and edit by Miyako Akiyama

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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