賃貸契約成立に家主が苦慮、高止まりするマンハッタンの空室率

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ニューヨークのマンハッタンで家を借りる人は現在、家主よりも有利な立場に立っている。家主たちは、家賃を割り引くなどのインセンティブをちらつかせて、借り手を獲得しようと必死だ。背景には、新型コロナウイルス感染拡大の影響で住民が大挙してニューヨークから転出し、空室率が異常に高くなっていることがある。

マンハッタンの空室率は2020年8月、この10数年ではじめて5%を超えたとCNNが報じた。賃貸契約の成立件数は、2019年と比べて24%減となった。

住む人のいない多数のアパートを埋めようとする家主の多くは、家を探す人に対して、驚くようなインセンティブを堂々と提示している。ブルームバーグによれば、3カ月間家賃無料というケースもあるという。

不動産仲介会社コーコラン・グループのゲイリー・マリン(Gary Malin)最高執行責任者(COO)はブルームバーグに対して、「借り手は、一度に4~5件の住宅に賃貸申し込みを行い、それぞれの条件を比較して交渉している」と述べた。

ニューヨーク専門の不動産サイト「ストリート・イージー」のエコノミスト、ナンシー・ウー(Nancy Wu)はニューヨーク・タイムズ紙に対し、ニューヨーク市で起きている賃貸市場の大変動は、「新型コロナウイルス感染症が終息しない限り続いていくだろう」と指摘し、「経済への最大の影響はこれから来る」と述べた。

不動産鑑定企業ミラー・サミュエルが発表した報告によれば、マンハッタンでは8月の段階で1万5025室が空室となっていた。これは14年ぶりの高水準だ。

ニューヨーク市は、2020年に入って米国に新型コロナウイルスが上陸したときの中心地だったと言ってよい。感染拡大によって、同市の経済は大打撃を受けた。ニューヨーク州全体で感染拡大を防ぐための規制が行われた結果、膨大な数の商店や企業が閉鎖し、失業率は最高で16%に上った。この数字は全米平均の2倍だ。

多くの人が在宅勤務となり、レストランや文化施設がなかなか再開しなかったため、ニューヨークでアパート暮らしをしていた人たちの多くは、荷物をまとめて実家に帰るか、同じ家賃でもっと広い部屋を借りられる郊外や地方へと移って行っている。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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