ゲストにルームサービスを提供し始めた世界初のホテルとしても知られる同ホテルは、1931年の開業以来、裕福なビジネスマンやハリウッドのスターたちの間で高い人気を得てきた。また、訪米する各国の王室メンバーが滞在するホテルとしても知られてきた。
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中国企業が競って外国の不動産を投機的に購入していた2015年、安邦保険集団に米史上最高額の19億5000万ドル(約2060億円)で買収されたウォルドーフ・アストリアでは、2017年後半からおよそ10億ドルをかけた改修工事が進められている。
10月17日までの期間中に競売にかけられる1万5000点以上の品々には、客室やレストランで使われていた家具や照明器具、装飾品や絵画などが含まれる。中国政府が安邦保険を管理下に置いた後(安邦の創業者、呉小暉は詐欺や職権乱用で有罪判決を受け、同社は解散)、その受け皿として設立された大家保険集団の米国法人を率いるアンドリュー・ミラー最高経営責任者(CEO)は、「これらはすべて、“歴史の証人”だ」と述べている。
ホテルに来館した数々の著名人たち(Drew Angerer / by Getty Images)
出品される品々は、同ホテルの輝かしい過去を反映するものばかり。女優のマリリン・モンローやエリザベス・テイラー、退位した英国王エドワード8世(ウィンザー公爵、現在の君主エリザベス女王の即位につながった)、ウィンストン・チャーチル英首相、ハーバート・フーバー米大統領、作曲家コール・ポーターなど、ホテルに長期滞在、または居住した著名人らにちなんだ名が付けられたスイートに置かれていたものもある。
エリザベス女王が座ったディスプレイ(Drew Angerer / by Getty Images)
オークションを主催している競売会社カミンスキー・オークションズによると、コール・ポーターが使用した1907年製のスタインウェイのグランドピアノや、ジョン・F・ケネディ大統領が使用したロッキングチェアなど、値が付けられない“歴史的価値”があるものは、営業を再開した後のホテル内に展示される予定。
2017年時点の改修前ホテルロビー(Drew Angerer / by Getty Images)
オークションによって得られた収益は、1930年代に建設されたニューヨークのもう一つのランドマークであり、同ホテルに隣接する聖バルトロメオ教会とそのコミュニティーハウスの改修に充てられるという。
改修後の新たなウォルドーフは、客室数375のホテルと375戸のコンドミニアムからなる建物に生まれ変わる。米紙ワシントン・ポストが報じたところによれば、1ベッドルームのコンドミニアムの価格は260万ドルからとなる見通し。
ただし、ニューヨーク市内はすでに高級物件が過飽和状態となっているほか、高額物件の購入時に課されるマンション税の引き上げが販売に影響を及ぼしている。また、パンデミックの発生とその後の景気後退により、過剰在庫はさらに膨らんでいる。コンドミニアムの販売は、見通しが明るいとは言えない状況だ。