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近代オリンピックでは、今から100年前の1920年アントワープオリンピック(ベルギー)も実は第1次世界大戦の直後、同時にスペイン風邪(インフルエンザ)によるパンデミックが起きた直後の大会でした。

この大会では、初めてオリンピックシンボル(五輪旗)がメインポールに掲げられました。五色と背景の白を使うとほとんど全ての国の国旗が表されるということで、「国々の連帯」が強調されたのです。そして、「選手宣誓」も始まり、同じく開会式で、軍で使用されていた通信用のハトはもういらないということで、参加国29カ国にあわせた29の箱を用意して、箱を開けてハトを放ちました。

この「連帯すること」、「フェアプレイを生み出すこと」、そして「平和であること」の3つは今もレガシーとして開会式で引き継がれています。「戦争」と「疫病」の後だったからこそのレガシー、新しいオリンピックの理念が築かれたのだと思います。ですので、今回の東京大会でも新しいオリンピックの価値が生み出されることでしょう。


アントワープ1920大会開会式 野口源三郎「第7回オリンピック陸上競技の印象」1921年より

先に述べたとおり、紀元前776年、これがオリンピアードの始まりであり、オリンピアードの一年目にオリンピックを開催することは古代から決まっています。戦争で中止された時も数えていますが、これを古代から数えると2021年は第700回オリンピアードの一年目になる。つまり、新しい「オリンピック・ムーブメント」の開幕であると歴史的に位置付けられているのです。

このことからも、東京2020大会が2021年に開催されることをオリンピックの原点を振り返るきっかけとし、ここからまた新たな歴史が始まっていくという認識を持つ必要があるのではないでしょうか。

1940年は戦争で中止になり、1964年には戦争からの復興を目指しました。今回の2020年大会で疫病からの復興を果たせば、五輪の原点からの問題を「東京」は乗り越えられたことになる。ある意味、宿命の都市のようにも思えます。以上の観点から、「歴史的な大会になる」とIOCのバッハ会長が言う以上の意味合いが今回の東京2020大会にはあると、私は思います。



真田 久◎筑波大学体育系教授、博士(人間科学)。スポーツ人類学、嘉納治五郎研究に従事。2014年よりTIASアカデミー長として、世界各国から毎年20名の大学院生の人材養成を担う。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会参与、同組織委員会文化教育委員会委員としてオリンピック・パラリンピック教育に、2019年よりIOCオリンピック研究センター研究助成選考委員会委員としてオリンピック・ムーブメント研究の促進に関わる。


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文=塚本拓也 編集=宇藤智子

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