すべての行動の根底に、感染リスクとの戦いや葛藤がある
外食・娯楽・旅行を再開した人に理由を尋ねたところ、1番多かったのが「緊急事態宣言の解除」で51.1%、次が「移動自粛や休業要請の解除」で31.5%。主観的な判断や考えに基づいた理由で再開する人が少数派であったことも見えてきた。また30代以上では、再開の理由として「店舗・施設での感染防止対策の徹底」を挙げる比率が年代とともに上昇し、感染リスク抑制のため、外出先の具体的な状況を気にかける様子がうかがえた。
一方で自粛を続けた人もおり、その理由は「(自分が)感染するリスク」が48.6%、「ワクチン等がないこと(感染後のリスク)」が29.8%、「他人を感染させるリスク」が28.1%。外食・娯楽・旅行を実施した人のうち95%以上は、何らかのきっかけで再度自粛する可能性があることも分かった。
具体的には「緊急事態宣言の再発令」が64.7%、「知事による外出自粛要請」が51.6%、次いで「新規感染者増加」が49.0%だった。このように調査全体を通して、すべての行動の根底に感染リスクとの戦いや葛藤があることが明らかになった。
感染対策の徹底と消費喚起に向けて
今後の消費喚起、消費促進のためには、事業者は感染防止策、衛生管理の徹底を進める必要があると考えられる。これには、事業者単独の努力に加え、政府や行政からの働きかけによる防止策の徹底も重要だ。
消費者に対しては、「新しい生活様式」の周知徹底が必要だろう。特に、「新しい生活様式」のうち、3密を避ける、手洗いをするなどの「基本的な様式」(本調査では9項目を取り上げた)を全く実施していない人が6.3%、1つしか実施していない人が11.8%と、予防意識の低い人が外出している状況がアンケートから判明しているので、さらなる「新しい生活様式」の周知徹底が重要となる。
本追跡調査実施後の7月に入って新型コロナウイルス感染者数が急増するなど、感染状況が日々変動していくため、新型コロナウイルスに関する各種制度設計についての政策判断にも柔軟な対応が求められる。Go To キャンペーンを利用したい人の理由に、経済再興のため、事業者のためという回答もあった。近頃では「応援消費」の機運も高まっており、クラウドファンディングを活用した支援スキームも出現している。こうした機運をうまく取り込んで、共感を醸成していくことも重要ではないだろうか。
|社会システムコンサルティング部
毛利 一貴、西崎 遼、島村 安俊、田中 和香子、水石 仁
|マーケティングサイエンスコンサルティング部
梶原 光徳、白井 雄志、原野 朱加
|コンサルティング事業本部 パートナー
三崎 冨査雄
(この記事はNRIジャーナルからの転載です)