野村総合研究所(NRI)では、その実態や影響を把握するために緊急事態宣言発令以降3回にわたって大規模追跡調査として「新型コロナウイルス感染拡大に伴う生活・消費行動に関するアンケート」を実施し、消費者の意識変化、行動変容の実態を解明するとともに、今後の需要回復の見込みや対策の方向性を展望した。
産業ごとに異なる回復の差
新型コロナウイルスの感染拡大により、外食・娯楽・旅行関連消費の落ち込みが激しく、関連産業へのインパクトが大きいことが、5月に実施された総務省の「家計調査報告」によって明らかになった。
NRIでは2020年4月下旬、5月下旬、および6月下旬の3回にわたり、全国約1万人の生活者を対象にインターネット調査を実施。そして、このうち3回とも回答した8024人を対象に分析を行い、新型コロナウイルスが外食・娯楽・旅行関連業にどのような影響を与えたのかを明らかにし、回復策について考えた。
国内感染拡大前に数年に1回程度以上の頻度で外食、娯楽、旅行を実施していた人の数を100%とした場合、緊急事態宣言期間中に当該行動を実施していた人は外食31.0%、娯楽12.1%、旅行は6.2%にまで落ち込んだ。そこから6月下旬までに外食67.5%、娯楽30.7%、旅行も14.4%と徐々に需要が回復してきた。
また今後、新型コロナウイルス感染症が国内で終息するまでの期間に外食や娯楽、旅行の行動を再開するかどうかについては、再開時期未定を含め、外食91.3%、娯楽81.5%、旅行も76.0%にまで回復する見込みであることが分かった。さらに、国内終息宣言が発令された後では、それぞれ95%以上に戻るものの、100%には至らないという結果だった。
今後の行動再開の動きは、ジャンルごとに異なる傾向を見せている。すでに回復基調にあり今後さらに回復する「外食・運動」や、今後急速に回復する見込みの「イベント・旅行」、すでにある程度回復しているものの今後の回復スピードが遅い「遊興施設」、これまで回復が鈍く今後も回復が遅い「バー・ナイトクラブ」と、大きく4つのパターンに分類できることが分かった。
外食については「料理店・レストラン」の利用が最も早く回復、次に「喫茶店・カフェ」「ファーストフード」、その後に「居酒屋」利用が回復するという結果だ。また、日頃の利用頻度からの分析では、外食を週1回以上利用する「ヘビー層」の需要は、緊急事態宣言中も5割を維持し、緊急事態宣言が39県で解除された5月15日以降では9割弱に回復していることが分かった。
旅行については、まずは「日帰り」から回復が始まり、次いで「宿泊・近場」、「宿泊・遠方」へという結果に。興味深いのは、金銭面のゆとり(世帯年収)と旅行再開意向の相関が示唆されていることだ。