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2020.10.14

なぜAsanaやPalantir、Spotify、Slackは伝統的IPOを回避したのか?

先々週の木曜日、AsanaとPalantirというシリコンバレーで最も有名な2つのユニコーン企業が上場しました。両社はまったく別のビジネスを展開していますが、上場においては2つの共通点がありました。まず、どちらも上場初日に株価が急騰したこと。そして、両方ともダイレクトリスティング(直接上場)で上場したことです。

ダイレクトリスティングは近年注目を集めている上場方法で、テック界のトッププレイヤーの間でも魅力的な上場手段として選ばれるようになってきています。

先陣を切ったのはNetflixの元CFOでもあるBarry McCarthy氏で、当時のSpotifyのCFOとしてまさにこの異例の方法でSpotifyを上場させたのです。これに続いてSlackもダイレクトリスティングで上場し、さらにAirbnbやGitlab、Coinbaseも同様な形の上場を検討していると報じられました。

最近ではベンチャーキャピタリストの間でさえもダイレクトリスティングを勧める声が目立ってきています。伝説的なベンチャーキャピタリストであるBill Gurley氏による貢献が特に大きく、「ダイレクトリスティング:IPOよりシンプルで優れた上場方法」というイベントの主催などを通してこのトレンドを牽引しています。

日本のスタートアップ・エコシステムではこのテーマについてこれまであまり本格的に取り上げられてきませんでしたので、この機会にダイレクトリスティングの基本やそれを取り巻く状況などについて少し紹介したいと思います。

まずは定義から。

ダイレクトリスティングとは


ダイレクトリスティングでは従来の新規株式公開(IPO)で必要とされる様々な手順を踏むことなく会社を上場させることができます。新株を発行しないため、資金調達を伴いませんが、従業員や既存投資家が所有している発行済み株式を上場市場で売却できるようになります。また、アンダーライター(引受人、日本では引受証券会社)やロックアップ期間を必要としないという特徴があります。

一方で、通常のIPOでは新株の発行を通して資金調達が行われ、ロックアップ期間が設定されることが一般的です。加えて、仲介役として投資銀行(日本では証券会社に相当)が関わり、上場に至るまで密接に連携する必要があります。投資銀行の役割としては、公募価格の決定や、上場規程を満たすためのサポート、発行済み株式の引き受け、そしてその株式を独自の販売チャネルで実際に投資家に販売するなど、多岐にわたります。
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文=James Riney

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