ヴォディアノヴァは現在38歳。Zoomの取材でも「婚前契約」について触れていたが、彼女はいまスマートフォンアプリ「e-gree」のプロモーションを行っている。e-greeは、雇用やアイデア、離婚時等に必要な法的契約書を作成できるサービスだ。
e-greeは、ヴォディアノヴァが数年前からエンジェル投資家として資金を提供してきたスタートアップ17社のうちの1社。彼女のビジネスパートナーは、ロンドンを拠点にする、デジタルメディアとコミュニケーションの専門家ティモン・アフィンスキー(Timon Afinsky)だ。
ビジネスパートナーのティモン・アフィンスキー(左、Getty Images)
これまで資金提供した企業には、生理トラッカー「Flo」や睡眠アプリ「Lona」のほか、月間アクティブユーザー数が1億3000万人に上る、画像編集アプリ「PicsArt」もある。PicsArtは2020年7月に、ビデオエフェクト企業「D’efekt」を買収し、TikTokやYouTube、インスタグラムとの競合を目指している。
ヴォディアノヴァは、支援する企業選びに慎重だ。彼女は「ティモンと私は、世界に力を与え、よりよい社会を作ることに注力する製品や企業に投資をしています。お金を儲けるためだけではなく、その企業や製品が人々のためになるとわかる企業を選んでいます」と話す。
また2人は、経営に積極的に口を出す投資家でもある。
「ちょっと自分本位かもしれませんが、興味深い人たちとともに働くことは、私の人生を豊かにしてくれます」とヴォディアノヴァは言う。「それに、彼らを鼓舞したり、プロジェクトの足かせになっていそうな小さな問題を解決するために力を貸したりもできます」
ヴォディアノヴァの起業家精神が初めて覚醒したのは1990年代のこと。生まれ育った旧ソビエト連邦のゴーリキー市(現ロシア連邦にあるニジニ・ノヴゴロド市)に住んでいたころだ。
11歳だった彼女は、路上でりんごを売り始めた母親を手伝いながら、妹2人の面倒を見ていた。1人の妹は脳性まひで、もう1人は重度の自閉症だった。15歳になると、独立してひとりで果物を売り始めた。母親のところにやってくる強引な借金取りから逃れ、家族を経済的に支えるためだった。