僕はネガティブなことを考えたくないので、そういうポジティブな結果を想像した。いや、そう希望していた。でも、僕の予想は見事に外れた。
記者会見の内容は残念なものだった。ホンダは2021年末にF1を撤退するということだった。つまり、来年の最終戦までで、レッドブル・レーシングとスクーデリア・アルファタウリの2チームのパワーユニット・サプライヤーとしての参戦を終了するということだ。
このニュースを受けて、多くの国内外のコメンテーターが反論した。なぜなら、ホンダは最近、モータースポーツで波に乗っているじゃないか? ホンダのエンジンを使った佐藤琢磨選手がインディ500の2勝目を挙げたばかりだし、昨年からF1では5回も優勝している。また、2輪のモトGP選手権でも、ホンダは2017年からチャンピオンシップを3連勝している。めでたい、めでたい。
これはトヨタが長年F1に参戦して、一度も優勝できなかったという話とは違う。ホンダは昨年から優勝を重ねているし、パワーユニットがだんだんと強くなって、さらなる好成績が狙えるところまで成長した。もしかしたら、ホンダは自分の強さがわかっていないのかもしれない。現在トップチームのメルセデスに2年で5回も勝てるパワーユニットを作れるカーメーカーは他にない。
「今はやめるべきでない」という同僚が大勢いる。「リーマンショックがあっても、不況があっても、業績が落ちても、フェラーリやメルセデスはF1をやめないでしょう。F1はレース界のオリンピックみたいなもんだ。少し経済状況が厳しくなっても、国はオリンピックは必ず毎回参加するでしょう。ホンダには日本のモータースポーツ推進のためにも、F1を面白くするためにも、ぜひ参戦し続けて欲しい」と切望するのは英国の同僚だ。
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さて、ホンダはなぜ撤退したがっているのだろう。その理由を探ってみよう。
同社は、「環境への取り組みとして、持続可能な社会を実現するために、『2050年カーボンニュートラルの実現』を目指します。そのために、カーボンフリーの中心となる燃料電池車とバッテリーEVの研究開発に集中していく必要があります。F1で培ったエネルギーマネジメント技術と研究開発の人材を投入して、カーボンニュートラル実現に取り組むので、F1への参戦を終了します」という。
確かに、カーボンニュートラル開発を優先したがるスタンスはわかるけど、理由はもっと深いと思う。業績も関係していると考えられる。欧州でホンダ車は売れていない。唯一売れている車種のCR-Vとフィットも、欧州のシェアで1%にも達していない。F1は欧州のモータースポーツと言っても良い。ホンダはおそらく、F1で優勝しても、欧州での販売台数を刺激しないとわかったのではないか。