1893年、グローバー・クリーブランドは、国民には釣り旅行に行くと説明しておきながら、実際は大型ヨットの上で口蓋にできたがん性腫瘍の摘出手術を受けていた。
手術した医師団の一人の話によってこの事実が明るみに出たのは、24年後のことだった。この秘密をテーマにした著作がある作家のマシュー・アルジオは、「米国の政治史上、最も成功した隠ぺいの一つ」だと公共放送PBSに語っている。
米国で最も長く大統領を務めたフランクリン・デラノ・ルーズベルト。40歳近くになってかかったポリオの後遺症で、歩行ができず、車いすを使っていたことを隠していた。
3期にわたる在任中、ルーズベルトがそれを隠し通せた陰には、シークレットサービスの協力もあった。シークレットサービスは、大統領が車いすを使っているところを記者に撮られた場合に、その写真を破棄していたのだ。
ドワイト・アイゼンハワーは1955年のある晩、最初の心臓発作に襲われたが、ホワイトハウスの報道官は当初、大統領が翌日ウェストウィングに姿を見せなかったことについて、「消化不良」のためと説明していた。
ジョン・F・ケネディは若々しく活発なイメージとは裏腹に、たいへん病気がちで、消化器異常や重いアレルギー、背中の損傷、副腎の機能が低下するアジソン病など、さまざまな病気による慢性的な痛みに生涯つきまとわれていた。
しかし、大統領を務めるには虚弱で不適格と見られてしまわないように、こうした健康問題を秘密にしていた。
ちなみに、ロナルド・レーガンは2期目を終えてから6年後に、アルツハイマー病と診断されたことを公表したが、息子のロン・レーガンは、在任中すでにアルツハイマー病の初期症状が出ていた可能性があるとの見方を示し、物議を醸している。
ロンの異母兄にあたるマイケル・レーガンはこの説を支持せず、自著の宣伝が目的だとロンを非難している。レーガンをめぐっては、1期目の選挙運動中にも認知症のうわさが立ったが、いずれも根拠は乏しいのが実情だ。
74歳と高齢で医学的に肥満とみられているトランプは、新型コロナウイルスの感染による合併症を患うリスクが高い。医師団は4日、入院中のトランプについて体調は良くなっていると述べたが、ホワイトハウスの医師ショーン・コンリーはこれまで、血液中の酸素濃度や肺スキャンの結果など、トランプの病状に関する具体的な情報は明らかにしていない。