ビジネス

2015.04.27

東京を「世界一のクリエイティブシティ」に進化させる




世界各国のクリエイターが、口々に「東京で働きたい」という光景を想像できますか。ここ数年、東京を訪問するクリエイティブ産業の関係者に、日本のポップカルチャーについてレクチャーする機会があります。彼らが1週間のフィールドスタディを終えた後で、「東京に移住して働きたい人は?」と聞くと、「イエス」と答える人が3 割以上います。東京は、世界で活躍するクリエイターたちから見ても、アイデアの宝庫であり大変魅力的な場所。世界が「クリエイティブシティTOKYO」のパワーを高く評価している―、それはとても重要なことです。
この話は、私がいま進めている「NeXTOKYO」というプロジェクトにつながります。昨年のG1サミットでの議論をきっかけに、建築・都市開発、スポーツ、アート、ビジネス等、分野横断の専門家チームを結成し、東京の未来ビジョンを構想しています。核にあるコンセプトは、2020年のさらに先を見据え、「世界から人材・資本が集まり、世界と共創するTOKYO」を創ることです。東京を世界一のクリエイティブシティに進化させるために、様々なアイデアを政府や産業界に提案してきました。
中心となる提案の一つが、国家戦略特区を活用した、クリエイティブ人材のワーキングビザ緩和です。文化のイノベーションは、多様な才能が集まることで加速します。世界から優れた才能が東京に集まり、クリエイティブ産業を一緒に盛り上げていく。
同時に、彼らの才能を東京から世界に押し出していくことで、東京の発信力をさらに高めていこうという考え方です。
NeXTOKYOに先駆ける形で、私は10年から「クールジャパン戦略」に取り組んできました。政府の委員会メンバーとして、戦略立案や議論のファシリテーターを務めています。13年には、クリエイティブ産業の海外展開を後押しする官民ファンド「クールジャパン機構」設立にこぎ着けました。
この活動に取り組み始めたのは、「リーマン・ショック後の日本には、次の成長産業の柱が必要」との問題意識からです。アニメやマンガはもちろんですが、日本のファッションや食、そしてデザインなども世界で高く評価されている。この“ポテンシャルの塊”を、世界で稼ぐ産業として生かすべきでは
ないかと考えて、メディア発信や政府への提案を行ったのがスタートでした。
現在までに、クールジャパン機構は12件の投資を決定しています。映画やドラマ等の動画コンテンツを各国の言語にローカライゼーションする事業や、アジア主要都市にショッピングモールやフードコートをつくっていく案件が手がけられています。これらは、日本のコンテンツを世界に発信する重要なプラットホームになるでしょう。
またうれしいことに、後進の目標になる企業もどんどん出てきています。例えば、ラーメンチェーンの「一風堂」。そのニューヨーク店は、感度の高い消費者が集まるクールスポットになっています。きゃりーぱみゅぱみゅらが所属するマネジメント会社ASOBISYSTEMは、原宿にカラオケボックス付きの観光案内所を設置。訪日外国人に対する、「カワイイカルチャーの聖地・原宿」のプロモーションに取り組んでいます。
クールジャパンというと、ともすれば、日本人が考える「正しいジャパンコンテンツ」を世界に発信する、と理解されがちです。しかし、これは大きな間違いです。重要なのは、日本に眠る宝を“外からの視点”で発掘し、キュレーションしていく努力です。
NeXTOKYOプロジェクトで、クリエイティブ分野の様々な才能を東京に集めることができれば、彼らがキュレーターとなり、世界のマーケットと日本をつなげる新たなビジネスが次々と生まれるでしょう。20年に向けて世界の注目が高まるいまこそ、世界の才能や資本を呼び込み、クールジャパンを加速する絶好のチャンス。そんな想いで取り組んでいます。

G1「100の行動」とは
「G1サミット」の代表理事であり、グロービス経営大学院学長の堀義人が発起人となり、「G1政策研究所」のメンバーと議論しながら、日本のビジョンを「100の行動計画」というカタチで国民的政策論議を喚起しながら描くプロジェクト。どんな会社でもやるべきことを10やれば再生できる。閉塞感あるこの国も100ぐらいやれば明るい未来が開けるだろうと、東日本大震災直後の2011年より開始した。現在、100の行動のうち、85が公表されている。
HP: http://100koudou.com

笠井爾示 = 写真 辻本 力 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.11 2015年6月号(2015/04/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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