カリフォルニア山火事で加速する「次世代電源システム」の開発

2019年10月のサドルリッジ大火で高圧電線に迫る炎。カリフォルニア州ニューホール付近にて。(Photo by David McNew/Getty Images)

大規模な山火事が頻発するカリフォルニア州では、過去最大規模の山火事の原因が送電線だったことから、PSPS(public-safety power shut-off)と呼ばれる計画停電が頻繁に実施されている。

カリフォルニア州エネルギー委員会のMike Gravelyによると、州内の200万人以上がPSPSの影響を受けており、平均的な停電時間は11時間程度だが、3日から5日に及ぶケースもあるという。

停電の間、病院や高齢者施設は、重要な機器への電力供給をディーゼル発電機に頼ってきたが、山火事の際には燃料の入手も困難になる。そこで威力を発揮するのが、地域の近くに小型の発電施設を設けてエネルギーを確保するマイクログリッドの仕組みだ。

先日開催された、クリーン・エネルギー・ステイツ・アライアンスが主催するウェビナーで、Gravelyは、「マイクログリッドにおける課題はエネルギーの貯蔵システムだ」と述べた。

カリフォルニア州では今後2年間で2400メガワットの蓄電設備が設置される見通しだが、Gravelyによると、これは州が2045年までに必要とする2万~3万メガワットのほんの一部でしかないという。

Gravelyによると、州内のリチウムイオン電池を用いた蓄電設備の標準的なバッテリー持続時間は4時間だが、背景には州当局が、最低4時間の電源供給が可能な設備に補助金を与えていることがあげられる。

しかし、カリフォルニア州の当局者は、コストや信頼性、安全性の面でリチウムイオンを凌駕するテクノロジーがあると考えている。

「我々は現在、45のマイクログリッド施設のリサーチを進めており、そのうちの40の施設ではリチウムイオン技術が用いられている。今後の課題は、それらの施設で採用されるテクノロジーの幅を広げていくことだ」とGravelyは述べた。

彼によると、エネルギーの貯蔵システムの進化は、段階的に進んでいくという。「次のブレークスルーとなるのは、8時間から10時間の持続時間の実現だ。そして100時間を実現する前に、24時間から48時間を達成する必要がある」

病院や消防署は昼間の間、太陽光発電で電力需要の一部を満たすことが可能になるだろう。しかし、夜間を乗り切るためには少なくとも12時間の蓄電が必要だとGravelyは話す。

「持続時間が4時間のリチウムイオン電池で12時間の電力を満たす場合、3倍のコストがかかることになる。しかし、フローバッテリーやその他のテクノロジーはずっと安いコストで、12時間以上の持続時間を実現できる」とGravelyは述べた。

編集=上田裕資

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