ビジネス

2020.10.14 08:00

「心はプログラマだった」故・ヤフー井上雅博、15期無敗の秘訣


・ロジックベースで話す ~巧みな「井上語」使い~

井上さんと働いている人の何割かは「井上語」を話すようになる。

井上さんは、どんな相手にでも「〜があります。そこに〜を加えると〜になりますね」と、ゆっくりとロジックを順序立てて、話していた。決して、早口で畳みかけない。だから井上さんと話した後は、皆、合点がいった顔をして帰る。そして、そんなことを何回か体験しているうちに、周りの人間は、井上さんと話し方が似てくるのだ。それだけ、聞く人が分かりやすい話し方をしてくれる人だった。

・人に任せられる組織設計 ~任せるところは任せる~

井上さんはプログラマ出身だけあって、組織設計においては、各事業部・本部が自立して稼働するような設計を強く意識していたように思う。結果、問いかけに対しても、「その件はAに聞いておいて」という対応を聞く機会も多かった。そして、当のAさんに聞きに行って、その対応が当事者の意の沿わないとき、井上さんに文句を言うと「Aは信念の人だからねー」と、嫌味なく交わすのであった。

「蛇の道は蛇(じゃのみちはへび。その道の専門家はその道をよく知っている、の意)」、これも井上さんがたまに口にしていた諺である。

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Getty Images

・ポジティブシンキング ~ウィットと笑いのセンス~

暗いことは言わない、話には適度なウィットを入れる。これは会話のセンスとしか言いようがないかも知れないが、暗い話題でも暗いままで終わらせることは少なく、途中途中にエスプリを効かせ、笑いを取るセンスに長けていた人だった。

社長である以上、厳しい面もありつつ、最後は優しく見守ってくれていたように思う人が多かったのはそのせいではないかと思う。井上雅博の経営で、模倣不可能な強みを一つだけ挙げろと言われたら、それは、この会話のセンスかも知れない。
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文=曽根康司 編集=石井節子

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