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2020.10.14

「心はプログラマだった」故・ヤフー井上雅博、15期無敗の秘訣

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自分は2002年にヤフーに入社し、2008年~2012年の間は、小僧ながら、井上さんと種々の会議でご一緒する機会にも恵まれた。

井上さんについては、濃淡はあるにせよ、皆、「頭のいい人」「すごい人」という言葉で表現することが多い。しかし、偉人に対する遠慮なのか、具体的に何がすごかったのかを明示的に示しているものは、ほとんど残っていないようにも思える。マネジメントの仕組みにしても1万円以上は社長稟議だったとか、その程度のことしか語られていない。

15期連続無敗だったマネジメント手法は、プログラマでもあった井上さんが書いた最高のプログラムの一つであったのではないかと思うことがある。その中には、何か一般化できる要素もあるのではないかと思い、一部書き残しておこうと思う。

もちろん、今回ご紹介している要素は本当にごく一部だと認識している。本稿をお読みになられ、他の要素を思いだした方がいれば、ぜひ共有していただきたいと願ってやまない。

組織のマネジメントについて


・結果の徹底した共有 ~社員向け決算説明会の開催~

2002年に入社して最初に驚いたのは、井上さんは四半期毎の外部向けの決算説明会の後、夕方から社員を大フロアに集めて、再度、社員向けの決算説明会をしてくれたことだった。今思えば、毎回自分の通信簿を見せるようなものであるし、1時間前に話した内容をまた話すなんて、普通なら面倒でやりたくないイベントだったと思う。だが、井上さんは毎回やってくれた。

キャッシュフローを「おサイフの中身の増減」と、平易な言葉で表現したりしながら、床に体育座りしている若者たちに向かって、ゆっくりと丁寧に説明してくれた。「シェアードバリュー(価値観の共有)」が語られがちな昨今だが、井上さんは「結果の共有」を徹底していたように思う。

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井上さんは、諺をボソっと言うことも多かった。その中の一つ「門前の小僧習わぬ経を読む」。人間は誰でも、何回も見聞きした内容は知らないうちに覚えてしまうことを利用して、全社員に経営について教えてようとしていたのではないか。
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文=曽根康司 編集=石井節子

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