そんな中で、米国内でも意外な人物がこの状況を注視していると言われている。CIA(米中央情報局)のジーナ・ハスペル長官だ。
女性初のCIA長官としても注目されているジーナ・ハスペル長官(Getty Images)
そもそも、ハスペル長官はトランプ大統領から快く思われていなかった。実は以前からハスペルはいつ更迭されてもおかしくないという状況に置かれており、ハスペル更迭こそオクトーバー・サプライズとなるかもしれないとすら、少し前から囁かれていた。元米情報関係筋は、「結局は議会共和党員らに止められていたらしい」と述べていた。
トランプはこれまでも、自分の意にそぐわない、または後ろ盾にならない関係者はことごとくクビにしてきた。例えば、FBI(米連邦捜査局)の長官もトランプ政権になってから、代行を入れてすでに3人目であるし、国家情報長官も代行も含めると現在のジョン・ラトクリフ長官ですでに4人目だ。国務長官、国防長官、大統領補佐官など次々と人が入れ替わっている。
ハスペル長官については、トランプが長く疑惑の目を向けられているロシア政府による米選挙介入(2016年だけでなく2020年も)をCIAとして否定せず、トランプは不信感を抱いてきた。また今年6月、ロシアがアフガニスタンの武装勢力に、駐留米兵を殺せば報奨金を払うという約束をしていた疑惑が発覚したが、それを知らなかったと主張したトランプを擁護しなかった。それもトランプをイラつかせたという。
そんなハスペル長官も、一応は彼女なりにトランプからクビを切られないよう気を遣ってきた。ロシアがらみの物議を醸しそうなインテリジェンスに関しては、すべてを自らの判断でトランプに上げないよう制限しているという。こうしたトランプを怒らせて更迭されないように「忖度」をする術は、前CIA長官でトランプから信頼を得ているマイク・ポンペオ国務長官がアドバイスしていると言われている。
ただトランプ政権であるうちは、不安定な立場であることは変わらない。一方で、トランプに対してあまりに忖度するとCIA内部から不満が爆発する可能性もある。
ハスペル長官の行く末は、トランプの「オクトーバー・サプライズ」の行方が握っているということだ。