マネー

2020.10.05 16:00

DXを活用した経営構造改革をCVCが加速させる

KURONEKO Innovation Fundは、専務執行役員/経営戦略統括 経営構造改革担当の牧浦真司(中央)を中心に7名で構成。プロパーと外部採用の混成部隊として、ダイバーシティを醸成している

独立系VCのグローバル・ブレインが、オープンイノベーション推進のために、CVCを運営する大企業を集めたコミュニティ「αTRACKERS」。Forbes JAPANは、αTRACKERSと、国内CVC・オープンイノベーションの先進事例にフォーカスした集中連載を行っている。

今回は、ヤマトホールディングスが新たに立ち上げたCVCを取り上げる。


ヤマトホールディングスは2020年4月1日、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の「KURONEKO Innovation Fund」を、独立系VC大手のグローバル・ブレインと共同で立ち上げた。1号ファンドの規模は50億円である。

「投資対象は、分野・領域を定めているわけではありません」。ヤマトのCVCをリードする専務執行役員の牧浦真司はこう語る。

「アーリー、ミドル・ステージのスタートアップを中心に投資する考えですが、物流業はさまざまな産業との接点が多い業態。インフラではロボティクス、AI、データアナリシス、決済ならフィンテック、その先には量子コンピュータの世界もあります」(牧浦)

新型コロナウィルスの渦中での立ち上げ。投資実績はまだないが、牧浦に焦りはない。

「我々は投資ファンドなので、戦略的リターンではなく、あくまで投資リターンも重要視します。その意味では、20年の年始までの相場は明らかに異常で、立ち上げのタイミングを冷静に計っていました。新型コロナは想定外でしたが、想定通りに市場が調整局面に入ったので、このタイミングだと思ってスタートしました。1号ファンドがうまく回るようであれば、2号、3号と立ち上げていきたいです」

牧浦は、メリルリンチ日本証券に約20年間勤めた金融のプロフェッショナル。15年にヤマトに転じ、経営構造改革を主導してきた。自動運転の宅配実験「ロボネコヤマト」や、米ベル社と共同開発中の「空飛ぶトラック」などはテクノロジーを活用した経営構造改革の実践事例だ。今回のCVCは、そうしたアプローチを加速させ、テクノロジーによる構造改革を推進する要となるべき施策である。

同社は、今年1月に発表した経営構造改革プランで、自前主義を捨て、オープン・イノベーションに舵を切ることを表明した。目指すのは、1. 顧客・社会のニーズに正面から向き合う経営、2. データ・ドリブン経営、3. 共創により、物流のエコシステムを創出する経営、要は「運送業」から「運創業」への転換、の3点だ。そしてこの3点に共通する思想が、デジタルトランスフォーメーション(DX)である。1976年に宅急便を生み出し、宅配に革命を起こしたヤマトは、再びDXによって新たな変革を目指す。そこで重要な役割を担うのがCVCなのだ。
次ページ > スタートアップの空気を体感することも重要

文=間杉俊彦 写真=若原瑞昌

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 8月・9月合併号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

連載

DX NOW

ForbesBrandVoice

人気記事