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ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信

Drew Angerer / スタッフ / Getty Images

大統領選挙を目前に控え、ドナルド・トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染した。症状は軽いと伝えられてはいるが、事実としてウォルター・リード総合病院に入院をしたことが確認されている。

これほどタイミングの悪い感染はない。トランプ大統領は、テレビ討論会で民主党のジョー・バイデン前副大統領にコロナ対策が後手に回ったことを徹底的に批判されており、そこの失点を挽回すべく、先週末には、「新型コロナはうまく抑えられている」とか「新型コロナの終焉が視野に入っている」などと強気な発言を連発していた矢先だった。

最強の医師団や感染症のスペシャリストのアドバイスにもどづいて行動していたはずの大統領自身が感染し、全米にはまさに激震が走っている。

手負いのトランプに同情票が

トランプ大統領は、公務と選挙活動の両方で多くの人と触れ合ってきながら、いままではうまく感染を避けていた。5月には大統領の側近の護衛軍人が感染し、また7月には長男のガールフレンドが感染。さらに同じ月に国家安全保証アドバイザーのロバート・オブライエンが感染した。それでも本人は感染せず、マスクをほとんどせずに全国を飛び回っていた。

第1回のテレビ討論は、ディベートというよりは、互いの言葉尻をとってバカにしたり、子供じみた罵声が飛び交ったり、政策論争からは程遠い中身となった。選挙予想は、依然としてバイデン前副大統領がトランプ大統領を数ポイント上回る形で推移していた。

しかし、大統領本人が感染したとなると、選挙の行方はますますわからない。このあとの討論会はもちろんのこと、トランプ大統領のキャンペーンがどうなっていくのかまったく未定だ。まったく意外なオクトーバー・サプライズとなったが、これで文字通り空前絶後の大統領選挙となる。

「入院=不戦敗」ではない。むしろ、これまでの劣勢を埋めてしまうかもしれないという見方もある。というのも、アンチ・トランプの人々の間では、「ざまあみろ」といった粗野な対応をよく目にし、「これでトランプは終わった」とパーティーじみた大騒ぎが目立つ一方で、各メディアは選挙にどのような影響があるか、一様に慎重だ。手負いのトランプ大統領に同情票が集まるのではないかという予想も立っている。

通常、大統領のテレビ討論が始まるまでには、すでに毎回投票に行く選挙民の多くは自分の投票する候補を決めている。なので、問題は気分に流される浮動票がどちらに流れるかだ。

特にSNSであおられ、気分で候補者を選ぶ傾向が強い若者がこの層に多く、この人たちがどちらに投票するのかが、2016年の「ヒラリー・クリントン対トランプ」の選挙以来わからなくなってきている。

誰もがヒラリー圧勝と予想したあの選挙では、直前になってヒラリーが国務大臣時代にセキュリティの甘いプライベートのメールアカウントで国家機密について交信していたことが明らかになると、ヒラリー候補はイメージを悪くし、「ヒラリーは尊大だ」とトランプ候補に浮動票が流れ込んだ。これが、本人さえも予想していなかったトランプ勝利の一因とされている。ヒラリー本人もそれを敗因の最大要因と認めている。

文=長野慶太

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