一連の騒動は、ニコラとGMの提携にも影響を及ぼしている。計画では、GMがニコラ株を11%取得し、ニコラはGMから新型バッテリーシステム「アルティウム」と燃料電池「ハイドロテック」の供給を受ける予定だった。また、GMはニコラのピックアップトラック「Badger」の設計、認証、検証、製造を行う予定だった。
「ニコラとの取引きはまだ終わっていない。同社の新しい経営陣と交渉中であり、適切な時期に情報を公表する」とGMの広報担当者であるJulie Huston-Roughは述べている。
SECへの申請書によると、ニコラは9月30日までにGMと最終合意に至ることを想定していた。12月3日までに合意がなされなければ、提携は破棄される。
NIKOLA Badger(写真=NIKOLA)
Badgerのシャシーやパワートレインの部品、製造をGMに依存しているため、ニコラにとってGMとの提携実現は極めて重要だ。ラッセルは、GMとの提携が破棄された場合、Badgerの生産を継続するか明言していない。ラッセルは、この数週間で予約注文の払い戻しが何件発生したかも明らかにしていないが、GMとの提携が実現すれば、2022年から生産を開始する予定だ。
ニコラは、2022年までに水素燃料電池を搭載した大型トレーラーのプロトタイプを製造し、顧客と共同でテストを実施する予定だ。商用生産は、クーリッジにある工場で2023年から開始する。電動トラック「Tre」については、来年後半にウルムにあるイヴェコの工場で初期生産を行った後、2022年からクーリッジ工場で量産を開始する予定だ。
「巧妙な詐欺」との指摘も
Hindenburgは、ミルトンのこれまでの発言を取り上げ、「ニコラは多くの嘘の上に作られた巧妙な詐欺だ」と主張している。
一方、ラッセルとGirskyは、ニコラがSECに提出した書類の内容が正確であると主張している。ニコラは、Girsky率いるVectoIQと合併してナスダック市場に上場を果たしたが、Girskyは合併に当たってVectoIQが行ったデューデリジェンスの内容を支持するとも述べている。
「私はアナリストを20年近く務め、企業の様々な問題を明らかにしてきた。我々は、ビジネスモデルの問題点を洗い出すために専門家グループを雇い、パートナーたちと話をした。我々は将来を見据えたデューデリジェンスを実施した」とGirskyは話す。
ニコラは、水素ステーションの建設に当たり、BPなどのエネルギー会社とも協議を進めていたが、ヒンデンブルグの告発によって交渉は中断している。
ラッセルは、提携交渉中の企業名を明かさなかったが、水素ステーションの建設は他社との提携に依存していないとしている。「我々が目指すマイルストーンの達成は、パートナーの存在に依存していない。資金調達計画も、単独で実行することを前提にしている。必要に応じて自社だけで前進するが、パートナーと組むことでスピードを上げ、リスクを低減することが可能になる」とラッセルは語った。