この経緯から考えると、ドコモの完全子会社化は、菅新政権の誕生とはまったく関係なく、NTTグループ内では「既定路線」だったことになる。
つまり、「NTTとドコモの思惑のズレを補正」、完全子会社化への動きは、こう推察すべきではないか。
NTTは2018年8月、NTTコミュニケーションズ、NTTデータ、ディメンションデータ、NTTセキュリティを含め、グローバル事業会社再編へと動き出し、日本ではあまり認知されていないが海外では「コム」でもなく「データ」でもなく、「NTT」ブランドとして始動した。
肌身で感じた、通信業界内の「障壁」
一方、ドコモだけがグループ会社の稼ぎ頭として「単独行動」を許されてきた。国内市場では携帯電話事業は頭打ち、人口減少が確実なこのご時世に普及が続伸するとは想定されない中、通信事業に依存しない「スマートライフ」と呼ばれるビジネス領域への進出を打ち出してはいた。そこで「スマートライフ推進部」を新設するなどはしたものの、特に目立った新規事業は立ち上がらないままだった。
認可制である通信事業については、昨今では水道、ガスなどのライフインフラとほぼ同様、「何もしなくても収入は間違いない」という実態とそのメンタリティが、新規事業展開の障壁となってきたことは、私自身、肌身に感じている。
さらに海外から事業提案も多いものの、「ドコモはグループ内でも国内担当なので」と断りを入れるのが定石。楽天やソフトバンクがこれだけ海外事業を手掛けている時代とは真逆の会社体質と断言してもかまわないだろう。
NTTグループ内の稼ぎ頭があぐらをかいた姿勢でいたため、持ち株会社であるNTT(ちなみに社内ではコレを差しNTT本体は「持ち」と略称される)が業を煮やしテコ入れを考えたとしても、むしろ当然の流れだ。
ましてや今年3月24日、NTT澤田純社長とトヨタ豊田章男社長は記者会見、両社互いに2000億円規模の出資を行い、株式を持ち合う資本提携を発表。「GAFAへの対抗」という文脈で澤田社長は「対抗の意思はある」と明言している。
さらにNTTは6月にNECへの増資を発表。 10年後にやって来る6G、NTTが提唱する「IOWN(アイオン)構想」(光通信やコンピューティング技術を駆使して社会全体に高速なネットワーク基盤を敷く構想)など最先端の通信インフラを共同開発して行くとした。