「完成という概念はない」日産、VW、BMWのリブランディングが象徴する進化

自動車メーカーにおいても、複数のブランドが軒並みリブランディングを進めている。


3社のリブランディングにおける主な共通点


今回大胆なリブランディングを行った3つの自動車ブランドであるが、新しいロゴのデザインディレクションはかなり共通点が多い。この3社の狙いを理解すれば、これからの自動車ブランドの進んでいく方向性も理解できるだろう。

1. デジタルに対応したフラットなデザイン

最もわかりやすい共通点としては、ロゴが全てフラットになっているということ。2000年前後から多くの自動車メーカーはグラデーションを多用し、立体的、メタル、物理的なロゴを採用していた。

それから20年ほど経ち、デジタルが消費者の生活の大部分を占めるようになったことで、ロゴもデジタルに最適化され、フラットになってきている。今回のロゴ全てがデジタルファーストの概念でデザインされている。

2. 重厚感からEV、コネクテッドを連想させるデザインに変化

新しいロゴに利用されている線は3社とも細く、洗練された感じになった。自動車という重厚なプロダクトのイメージから脱却し、より電子的なイメージを想起させる。

これは、自動車ブランドとして、これからはEVや各種センサー、コネクテットといった、デジタルテクノロジーが主流になっていくことを見据えてのリデザインと思われる。

3. 環境への配慮をしたシンプルスタイル

また、ロゴに利用される構成要素を少なくし、利用される色も少なくすることで、環境に配慮しているというメッセージにもつながる。シンプルなロゴは、印刷などの出力を行う際に必要とされるインクや素材を極端に少なくすることができる。

それにより、消費・廃棄するマテリアルを減らすことで、より地球に優しいブランドイメージを与える。

4. 自動車メーカーからモビリティーカンパニーへの進化を伝える

自動車という物理的なプロダクトよりも、デジタルでの利用を最優先したデザインにすることで、自動車メーカーからの脱却を図っている狙いがあると思われる。

同時に、ユーザーとのタッチポイントをよりデジタルに振ることで、新しいファン層の開拓と、モビリティーカンパニーとしてのビジネスモデルの構築を狙っている可能性は高い。

5.完成よりも常に進化を感じさせる

今回のリブランドにおいて漠然と感じていた共通点が、“発展途上”感。これは決して悪いことではなく、ソフトウェアを中心に、多くのプロダクトが継続的にアップデートがされる現代においては“完成”という概念は無い、自動車ブランドも常に進化していることをユーザーに伝える良いデザインだと感じる。

逆に言うと、“完成した”というイメージは、同時に“進化しない”というイメージを与えかねない。この点においても、今後のデザインの役割も大きく進化していくと感じる。

ブランドにおけるロゴの真の役割とは?


結局、ロゴの進化の真のインパクトは会社の進化と、新しいサービスの価値が消費者に受け入れられるかどうかで決まってくる。

それがうまくいけば、誰も新しいロゴに文句を言う人はいないだろう。一方で、期待値に答えられない場合は、新しいロゴと一緒にブランド価値が大きく下がる可能性もある。

現状における新しいロゴは、それ自体のクオリティーや価値に関係なく、新しい時代の明確なシンボルでもある。それは、最近のネガティブな情勢に対して、より軽く、楽しく、明るい未来を連想させる、ブランドの意思表示としても読み取れる。

(この記事は、btraxのブログfreshtraxから転載・編集されたものです)

文=Brandon K. Hill(CEO of btrax inc.)

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