「完成という概念はない」日産、VW、BMWのリブランディングが象徴する進化

自動車メーカーにおいても、複数のブランドが軒並みリブランディングを進めている。


VWのリブランディング事例


フォルクスワーゲン(VW)も2019年に大幅なリブランディングを通じ、ロゴのアップデートを行った。その方向性はNissanと同様に、立体的・メタル感のあるものから、シンプルでフラットなものになった。

New Volkswagenと呼ばれるこのリブランディングプロジェクトには、実に9月の時間と19の社内チーム、17の外部デザインエージェンシーが関わっている。

プロジェクト責任者でもある同社CMOによると、今回のリブランディングのゴールは、全てのタッチポイントにおいて、より総合的なグローバルブランド体験の創造であるとのこと。新しいロゴは、より人間的で生き生きしたものになり、顧客の視点をより多く取り入れ、本物のストーリーを伝えたいと考えているとも語っている。

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自動車のロゴからアプリのアイコンスタイルへ


VWのロゴはその構成要素を極端に減らすことにより、モダンでシンプルなものとなった。それにより、利用における汎用性は格段に上がり、特にデジタルメディアでの利用性は非常に高まっていると言える。

この新しいをロゴ見ると、まるでモバイルアプリでも提供しているアメリカ西海岸のスタートアップっぽい感じがする。以前の記事でも紹介した通り、最近のスタートアップロゴは共通して、アイコン感を演出し、ロゴタイプよりも、ロゴシンボルの方を重要視する傾向にある。

それもそのはず。VWはこれからWeb、モバイルアプリ、Apple Watchアプリなどのデジタルプラットフォームにおいて、複数のブランド展開を進めていく予定なのだ。これは、デジタル・アナログの両方でユーザーに体験を届けようとする同社のモビリティーカンパニーとしての方向性を感じさせる。

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VWのロゴ遍歴


ドイツ語で「国民車」を意味するフォルクスワーゲンのブランドの歴史は1939年より始まる。設立当初から、円の中に“V”と“W”の文字を縦に配置しするロゴのモチーフは共通。

そして、時代と共に微調整を重ね、2000年より、メタリックさと立体感を打ち出したロゴに変更し、2012年には、より金属感をました先代のロゴに辿りついた。

VWのこれまでのロゴの変更遍歴を見てみると、そのブランドの一貫性の高さは、自動車ブランド随一と言っても良いだろう。

VWロゴの変遷


VWの新しいロゴを分析


では今回新しくなったVWのロゴを少し分析してみる。全体的に最も大きな変化としては、アウトラインスタイルに移行し、フラットになったこと。採用されている色も一色のみで、これ以上削れる要素がないほどに洗練されている。

全体のコントラストが強くなり、可視性も高まった。それにより、利用シーンを選ばない汎用性の高さを獲得したと言える。

加えて、その他の細かいポイントを分析してみる。

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1. 重厚感よりも可愛らしさを演出
今回のリデザインでユーザーがイメージ的に最も変化があったとすれば、その可愛さだろう。細いラインを採用したことで、より繊細に雰囲気が醸し出されている。同時に、一つ前の重厚感は無くなり、軽さ、柔軟さ、可愛らしさを演出している。

2. 少し未完成な感じが親しみやすさを感じさせる
このデザイン、プロの視点から見ると、少しアンバランスな部分がある。VとWの間のわずかな隙間や、円の部分と文字の部分のアウトラインの太さの微妙な違い、そしてWの下の隙間などがそれである。

おそらくこれはあえてそうすることで、少し不器用な感じで、親しみやすさをだしたのではないかとも感じる。

3. “動くフレーム”のコンセプトを上手に活用
ロゴのリデザインに加え、今回のVWのリブランディングで最も特質すべき点は、ブランド全体の異なるタッチポイントを上手につなげたところだろう。自動車ブランドはどうしても、車両とデジタルでユーザー体験が分断されがちであるが、下記のコンセプト動画でも表現されているように、VWは“動くフレーム”のコンセプトで、そのギャップを上手に埋めたと言える。


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文=Brandon K. Hill(CEO of btrax inc.)

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