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自分のやれる事をやり抜く「強さ」


満足の行く結果が出ない──自分が思い描いた姿をグラウンドで発揮できないときであっても、梶谷が自らに科した決め事がある。それは「愚痴を言わない」ことだ。

「もちろん、家では妻に愚痴を言うことはありますよ。でも一度グラウンドに立ったら愚痴は言わない。もし結果が出なくても、それは自分のせい。そんな思いで常にプレーしてきました。与えられた持ち場でどれだけ自分が必死になってやれるかです」

アスリートには怪我がつきもので、実際、梶谷も慢性的な肩の痛みも含めて度重なる怪我に悩まされてきた。だがそれを言い訳にすることはしない。右肩の怪我について自身の投げ方の悪さが生み出したものであり、「責任は自分にある」という。「怪我がなかったら……と思ったことは一切ありません」と梶谷は強く言い切る。

また、プロ野球という厳しい競争の舞台には、当然だが毎年のようにライバルが出現する。相手チームに勝つことだけではなく、チーム内での競争にまずは勝たなければ出場の機会はない。

ビジネスパーソンでも、頭角を表してきた若手を気にし過ぎて自分自身を見失ってしまう。そんな経験はないだろうか。だが、ふとした時に「相手はコントロールすることが出来ない」ということに気付く。梶谷も同じだった。

「ファームでの生活が続いた時はライバルの成績によって、熱意や気持ちが左右されないようにと、一軍の試合を見ないこともありました。ただ、天気と同じで自分にはどうしようもない。であれば、自分がやれることをやるしかないんです」


(C)YDB

自分のやれる事だけをやる──梶谷はここ数年、そのことだけを考えて練習に取り組んできた。強みである“足”をアピールするため、盗塁、走塁面を武器にする。全部が並を目指すのではなく、何かが秀でている魅力を追い求め続けた。

相手と比較してしまい、悪い部分を直したいと思うのは誰にでもあること。そこを修復するために最低限の努力は費やす。だがその中で良い部分にフォーカスして取り組むことが重要だ。替えが効く1人になるだけでは、プロ野球の世界では生き残っていけない。それはビジネスの世界でも同じ。その人にしかない魅力を発揮してこそ、価値が高まっていく。デビュー当時から足を武器として、梶谷は強みを育て続けてきた。

文=新川諒 写真=小田駿一

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