日本人が使いがちな英語表現は相手を傷つける? 米国で学んだ正しい伝え方

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配慮を兼ね備えたビジネススキル


気遣いや配慮は大切ですが、気遣うばかりではビジネスが停滞する可能性もあるでしょう。それでは、具体的にアメリカで働くビジネスパーソンたちはどのように仕事を進めているのでしょうか。

まず、日本とアメリカでは締め切りに対する認識が異なります。

日本では締め切りは絶対的なものですが、アメリカでは、基本的に締め切りは「間に合えば良いけど絶対的なものではない」と認識しています。また、日本人は優先順位が低いものも丁寧に対応する傾向にありますが、アメリカでは優先順位のすり合わせができていないものは不要不急と判断され、意図的に無視されることも多々あります。

そのため、締め切り間近になって「〇月△日までに完了すると言ったじゃないか」などと気炎をあげても、怒りっぽいダメな奴、と思われるのが関の山。なぜその締め切りまでに完了する必要があるのかを共有し、定期的にフォローアップして進捗を確認するという丁寧なアプローチが必要です。

同じ企業で働くマネージャー職の同僚は、スケジュールが遅れている部下に対して「〇〇さんは最近忙しそうだね、頑張ってるね」と前向きな表現を使いながらも、業務の進捗が遅れていることを当事者やそのチームに行間を読ませて伝えており、勉強になりました。

このように丁寧に進めながらも、それでも十分な対応が得られない場合には、組織の上の階層に話をあげる「エスカレーション」を使います。

ポイントは、2つあります。1つ目は、相手の上司ではなく、必ず自分の上司にエスカレーションをすること。2つ目は、誰かが非協力的であるとか、プロジェクトの進捗が特定の個人が原因で遅れている場合であっても、個人を批判しないということです。

メール等の客観的なレコードを基に時系列で当事者に時間を与えるなどのプロセスを経たうえで、マネージャー同士で対応してもらいます。こうすることで、個人として火中の栗を拾うことなく、かつ、透明性を担保し、とるべきアクションをとっていることも示せるのです。

もしも、細かい英語表現に自信がない場合には、伝え方に意識を向けると良いでしょう。メールなどの文章では表現不足による誤解が露骨に出かねないので、ビデオチャットを活用することで表情で表現不足を補うこともできます。あるいは、最初に、バックグラウンドが日本だから、「言葉や文化のギャップで誤解させちゃうことがあるかもしれないけれど、意図していないことも多いから疑問があれば何でも直接聞いて下さいね」と自分から表明してしまうのもひとつの手です。

海外で働く、あるいは、グローバルビジネスを展開している場合には、国や人材の文化的背景の差を意識的に理解して、言動を変えていくことで、より深い信頼関係を築けるのではないでしょうか。まずは、双方の違いに気づき、意識することが大きな一歩になるはずです。

連載:「Follow your Heart ─日本人が世界で勝つ方法─」
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文=伊藤みさき 構成=竹崎孝二

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