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マスクの数は決勝までの試合数に合わせた7枚。初戦後に残りの6枚すべてを披露したいと宣言し、見事にそれを成し遂げた。大坂選手は9月12日の決勝戦後に、マスクをつけた意図について「人々が(人種差別についての)議論を始めるきっかけをつくりたかった」と説明。「より多くの名前を見せたいと思ったことで、もっと勝利したいという気持ちが湧いたように思う。それが私をさらに強くした」と語っていた。

この出来事に対して、大坂選手のスポンサーを務める国内の企業に取材を申し込んだところ、沈黙を貫く企業もあるなか、シチズンの担当者が取材に応じた。「大坂選手個⼈の活動に対しては、スポンサー企業として発⾔する⽴場ではありませんが、彼⼥の勇気ある⾏動を尊重しています」と回答し、大坂選手の勇敢な行為を重んじる姿勢を示した。

日本国内ではこの出来事に関して、SNS上の一部のユーザーから「スポーツと政治を混同させるな」との批判が上がっていたことも話題になったが、ブランドにはグランドスラム優勝を飾った大坂選手のポジティブな影響がすでに届いているようだ。

「グランドスラム優勝を飾った際には、試合着用商品の発売前の予約が相次いて事前にほぼ売り切れたこともあり、大坂選手の影響⼒の大きさを感じています。また現時点でも、全⽶オープン優勝前後くらいから、大坂選手を『時の⼥神』として起用している2020年秋冬の限定コレクション『CITIZEN JOUNETSU COLLECTION』に関するお問い合わせを多数いただいており、アイコンである赤いドレスを纏う大坂選手がお客様へは新鮮に映るようで、ポジティブなコメントが寄せられています」

全米オープンの前には米誌「タイム」記事内での対談にて、大坂選手は「アスリートはどんな時であれ発言をするたびにスポンサーを失うのではないかと恐れていると思います。私の場合、スポンサーのほとんどが日本企業ですので、まさにそうです。彼らは、わたしの話していることについて理解がなかったり、動揺することもあるかもしれません。でも何が正しいのか、何が重要なのかを話さなければならないと感じる時は来ると思います」と語っていた。

トップアスリートとして世界で活躍する大坂選手は、これまでにも多くの日本人にグローバルな競争を戦うためのインスピレーションを与えてきた。スポンサーの意図を忖度してただ沈黙するのではなく、自分が信じる正しさを多くの人に伝わる形で表現できる大坂選手の姿は、これからの時代の「広告塔」のあり方をリードしていくのではないだろうか。

文=渡邊雄介

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