ファイザーCEOがワクチンの「政治問題化」に反発、社内文書で

ファイザーCEOのアルバート・ブーラ(Steven Ferdman / by Getty Images)

ファイザーCEOのアルバート・ブーラは、先日の米大統領選討論会で候補者らがワクチン開発のスケジュールについて激しくやり合い、「科学的事実よりも政治的な言葉で議論した」ことに「失望した」と述べている。フォーブスはブーラが社内向けに送信したEメールを入手した。

メールの件名は「Moving at the Speed of Science(科学のスピードで前進する)」とされており、これはトランプ政権がワクチン開発プログラムを「ワープ・スピード作戦」と名づけたことへの反論と受け取れる。

広報担当者がニューヨーク・タイムズ(NYT)に語ったところによると、ブーラは以前、10月までに開発中のワクチンのデータをFDAに提出することを望んでいたが、それは同社がその時点までに臨床試験を完了させることを意味するものではなかったという。

ただし、ブーラは今後の見通しを楽観しており、年末までに1億回分のワクチンを送り出すこを望んでいると述べている。

「党派争いが激化する中で、ワクチン開発をさらに迅速に進めることを望む人々も居れば、先延ばしを望む人々も居る。しかし、そのどちらも当社としては受け入れがたい」と彼は述べた。

ファイザーは他の製薬企業と同様に、適切な試験プロセスが完了するまでは、ワクチンの承認プロセスには進まない考えを示している。

ブーラは社内向けEメールで次のように述べている。「ワクチン開発をとりまく過剰な政治的議論が国民の信頼を脅かしている。私個人はワクチンがいつFDAの承認を受けて国民に配布可能になるのか、果たしてそれが実現可能なのかどうかも、予想できない。しかし、私たちがワクチンを政治と絡めて語ることをやめ、科学的評価のみを注視し、客観的な承認プロセスに進むのであれば、世界はより安全な場所になると信じている」

トランプ大統領は、ワクチンの実現を急ぐよう政府の科学者に求めているが、科学者はこれに反発し、ワクチン開発は政治的な堂々巡りの状態にある。トランプは繰り返し、FDAの承認が得られ次第ワクチンを配布すると述べ、それが11月の選挙前になるかもしれないと話している。

一方で、ワープ・スピード作戦のアドバイザーを務めるCDC(米国疾病予防管理センター)のディレクターらは、仮に年内にワクチンが承認を得られたとしても、3億2800万人の米国民に十分な量のワクチンが準備できるのは2021年の中頃になると述べている。

トランプは討論会で次のように話していた。「これは非常に政治的な問題だ。私はファイザーとも話した。私は、話をすべき全ての相手と話したのだ。モデルナやジョンソン・エンド・ジョンソンなどの素晴らしい企業と。彼らはずっと早くそれを進めてくれる。それは非常に政治的なものになる」

編集=上田裕資

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