ムーディーズは11月の大統領選について、考えられる4通りの結果を分析した。民主党の完全勝利、共和党の完全勝利、民主党が大統領選と下院を制するが上院では負けるケース、そして、トランプがホワイトハウスにとどまり、民主党が下院、共和党が上院の過半数を握るケースだ。
ムーディーズ・アナリティックスの首席エコノミスト、マーク・ザンディ(Mark Zandi) は、トランプとバイデンの経済政策案から見ると、「バイデンが勝利し、民主党が両院を制して、(バイデンと民主党の)経済政策を全面的に採用するシナリオのほうが、経済の見通しは堅調になる」と述べている。
「ブルー・ウェーブ(民主党カラーである青の波)」 により民主党が両院とホワイトハウスを制すれば、雇用の増加数がもっとも多くなり、経済成長の回復も最大になるとムーディーズは見ている。
このシナリオが実現すれば、バイデンは、インフラ、教育、社会保障への数兆ドル規模の支出をはじめ、より広範囲にわたる経済政策の変革を実行できる一方で、貿易と移民入国も促進できるようになる。
「政府支出が増加すれば、(GDPと)雇用が直接的に押し上げられる」とザンディは述べる。また、そうした政策の財源とするためにバイデンが提案している増税については、「間接的な影響」にとどまり、経済を鈍化させることはないとしている。
ムーディーズの分析によれば、トランプの勝利が経済に悪い結果をもたらすのは、財政出動の規模が小さいことと、貿易摩擦の悪化や入国制限が強まる可能性が高いためだという。
トランプは、「税金や財政支出による景気刺激の範囲が、(バイデンと比べて)はるかに狭い」と、ムーディーズは述べている。また、トランプの入国制限計画については、労働市場と労働生産性の成長をともに鈍化させることから、「長期的な経済成長の大きな妨げとなる」と指摘している。