バレット判事は、上記の件とは別の法律評論記事で、医療保険制度改革法に反対の立場を表明している。同法の無効化をめぐっては、11月に最高裁で口頭弁論が行われる予定だ。
トランプ大統領はバレット判事を指名したものの、これだけで最高裁判事への就任が確定したわけではない。同判事が11月の大統領選挙前に判事に正式就任するためには、上院の過半数の賛成によって指名が承認される必要がある。
とはいえ、上院共和党のトップを務めるミッチ・マコーネル(Mitch McConnell)院内総務(ケンタッキー州選出)は既に、バレット判事の指名承認に必要な票数を確保した可能性が高い。
保守化が進む最高裁が、経済に与える影響は
上院の承認を受けてバレット判事が最高裁判事の職についた場合、最高裁判事は保守派が6人、リベラルが3人になり、保守派がさらに多数となる。これについて一部の法律の専門家からは、最高裁が一般の米国民より大企業を優遇する方向に傾き、消費者保護や、ビジネスへの規制が弱まるおそれがあるとの懸念が出ている。
ワシントン・ポストの分析によれば、亡くなったルース・ベイダー・ギンズバーグ判事は、2015年から2017年の期間に、最も企業に対して厳しい姿勢を示した判事だったという。同判事が企業側の主張を支持する意見を表明したケースは全体の50%強にすぎなかった。これに対し、ニール・ゴーサッチ(Neil Gorsuch)判事やジョン・ロバーツ(John Roberts)首席判事をはじめとする他の判事は、企業側を支持するケースが70%近く、あるいはそれ以上に達していた。
「最高裁の裁判に携わる公益重視派の弁護士たちによると、企業側の主張を支持する可能性が高い判事がさらに1人増えることで、消費者や労働者側の弁護士にとっては、(判事による評決の際に)中道の判事を自らの側につけることや、企業に有利な決定の及ぶ範囲を狭めることがいっそう難しくなるという」と、ワシントン・ポストの分析は記している。
さらに、消費者の権利擁護を目標とする、独立した規制機関の前途に関する懸念もある。消費者金融保護局(CFPB)は、6月の最高裁の判断により、その存在意義が守られることになった。この判決で最高裁は、大統領が任意に同局の局長を解任する権利を認めたものの、それ以外の部分についてCFPBは干渉を受けず、業務を続行すべきだとの判断を示した。
最高裁の保守化により、連邦住宅金融局(FHFA)といった他の規制機関についても、今後が危うくなるおそれがある。より企業側に有利で、消費者保護が後退する判決が増える可能性があるからだ。