業務コラボレーションアプリを提供するAsanaの株価は30日午後2時時点で、28ドル付近で取り引きされている。2018年11月に企業価値15億ドルの評価を得た同社の時価総額は、40億ドル(約4200億円)を突破している。
しかし、AsanaのIPOは、同じ日にダイレクトリスティングでIPOを行ったビッグデータ企業「パランティア(Palantir)」の時価総額が210億ドル以上に達したのと比べれば地味であり、さほどの注目を集めていない。
モスコヴィッツとフェイスブックの同僚だったジャスティン・ローゼンスタインらが2008年に設立したAsanaは、フリーミアムモデルのソフトで、通知地獄に悩まされる起業家たちを助けようとしている。
「スタートアップ企業は、情報共有のために不釣り合いなほど多くの時間や労力を注いでいる。私たちはそれが不満だった」と、モスコヴィッツは以前のフォーブスの取材に述べていた。
フェイスブックの共同創業者として、世界で最も若い叩き上げのビリオネアになった彼は今回、ここ最近多くのスタートアップが採用するが、依然として風変わりなスキームとして知られるダイレクトリスティングでAsanaを上場させた。
ダイレクトリスティングにおいて、企業は新株を発行して資金を調達するのではなく、非公開の株式を公開株に転換する。伝統的なIPOのように、銀行に引き受けを任せる必要がないため余計なコストをかける必要がない。
今から約2週間前に、伝統的なプロセスで上場を果たしたクラウド企業「Snowflake」の株価は初日に115%上昇し、新株の発行により33億ドル以上を調達した。しかし、同社は数億ドルの銀行への手数料を無駄にしたのではないかという議論も起きていた。
Asanaの上場初日の株価の上昇幅は、ここ最近上場を果たしたUnity(32%の上昇)やSumo Logic(22%)、JFrog(47%)と同レベルだ。しかし、それらの企業との明確な違いは、Asanaが新株を発行せずに株価を30%以上も上昇させたことだ。
Asanaの2020年の売上見通しは1億4260万ドルとされており、テック業界の大手と比較すると大規模なものではない。しかし、モスコヴィッツと同社はダイレクトリスティングによって着実なリターンを得たことになる。
モスコヴィッツは8月のフォーブスの取材に、「当社は収穫期に近づいている」と述べていた。