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田坂広志の「深き思索、静かな気づき」


では、我々経営者やリーダーは、いかにすれば、そうした「ポジティブな想念」を身につけ、その想念を部下や社員、メンバーに伝播させる「想念感染力」を身につけることができるのか。

筆者は、あるとき、この取締役の強運の秘密を伺い知る言葉を聞かされたことがある。

「自分は、これまで、99%駄目だという状況で、それでも諦めず、粘って状況を逆転したことが、何度かある。その自信が、自分を支えているのだね」

すなわち、極めて厳しい逆境において、なお、決して諦めぬ精神。それが、運気を引き寄せる。そして、極限の逆境において運気を引き寄せた体験が、その人物に“自信のオーラ”を与える。そのオーラこそが、「想念感染力」の正体なのであろう。

1997年のワールドカップ・フランス大会のアジア最終予選。戦績不振の責任を取って退いた加茂監督の後を受け、急遽、監督に昇格した岡田武史氏は、必勝が課せられた次のウズベキスタン戦も、リードを許し、辛うじて引き分ける結果に終わった。

日本中のメディアも国民も「ああ、予選突破は絶望的になった…」と落胆した状況において、試合後の記者会見で、岡田監督は何と語ったか。

「いや、まだ首の皮一枚残っています」と述べた。

たしかに、この時、まだ、プレーオフ進出、予選突破という可能性が僅かに残っていた。その僅かな可能性を決して諦めなかった精神が、あの「ジョホールバルの歓喜」へと結びついたのであろう。

岡田監督は、運が強いから予選を勝ち抜いたのではない。決して諦めぬ精神が、運気を引き寄せたのである。それは、あの取締役も、しかり。

されば、我々が、自らに問うべきは、自身の運が強いか否かではない。いかなる逆境においても、決して諦めぬ精神を持っているか否かであろう。

その精神は、想像を超えた運気を引き寄せる。


田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、多摩大学大学院名誉教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)Global Agenda Council元メンバー。全国6100名の経営者やリーダーが集う田坂塾・塾長。著書は『運気を磨く』など90冊余。tasaka@hiroshitasaka.jp

文=田坂広志

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