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田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

かつて大手都市銀行の頭取を務めた人物に伺ったことがある。

「取引先の経営危機において、再建のために経営陣として派遣する人材は、どのような基準で選んだのでしょうか」

この問いに対し、頭取時代にBanker of theYearの世界的評価を得た経営者は、一言で答えた。

「それは決まっているよ。運の強い奴だよ」

それから数十年、様々な経営者の参謀として仕事をしてきたが、その体験に基づき、筆者もまた、著作や講演で、次の言葉を語っている。

「経営者の究極の力量は、運が強いことである」

実際、優れた経営者は、このコロナ禍のような危機においても、不思議なほど、強い運気を引き寄せ、危機を好機に転じていく。さらに、強運の経営者は、自分だけでなく、部下や社員の運気を高め、自身の率いる会社の運気を高めることができる。

そして、これは経営者だけではない。スポーツの世界でも、優れたリーダーは、自身の力でチームに強運を呼び込むことができる。

2010年のサッカーワールドカップ・南アフリカ大会において、激闘PK戦の末、惜しくもベスト8を逃がした岡田武史監督が、試合直後に語った敗戦の弁は、「自分の執念が足りなかった」との言葉であった。

この言葉は、裏返して言えば、「リーダーは、自分の力でチームに強運を呼び込める」との岡田監督の信念の表れでもある。

では、自分だけでなく、部下や社員、チームのメンバーの運気を高め、会社や組織全体の運気を高めることのできる経営者やリーダーとなるためには、何が必要か。

その一つの絶対的条件は、「ポジティブな想念の感染力」である。

すなわち、古今東西の運気論において「ポジティブな想念が強い運気を引き寄せる」ということは共通に語られるが、強運の経営者やリーダーは、自分がポジティブな想念を持つだけでなく、部下や社員、メンバーにも、そうしたポジティブな想念が伝播していく「想念感染力」を持っている。

筆者は、若き日に民間企業に勤め、ある取締役から直々の薫陶を受けたが、厳しい状況にあるプロジェクト案件を報告するため、この取締役の部屋に入っても、打合せを終え、部屋を出てくるときには、この取締役のポジティブな想念が伝播し、いつも、わくわくした気分になっていたことを思い出す。

この取締役の強運は、社内で弱小部門を率いながらも、遂に、この企業の社長、会長にまでなったことに象徴されるが、この経営者もまた、素晴らしい「想念感染力」を持ったリーダーであった。

文=田坂広志

VOL.54

「自然首都圏」が生まれる時代

VOL.1

なぜ、「集団的無責任状況」が生じるのか

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