同社はさらに、LSDを用いた精神疾患の治療の研究も進めており、8つの臨床試験を実施中だ。そのうちの1つは、LSDで不安障害の治療を目指すもので、幻覚剤治療で世界をリードするマティアス・リーヒティ(Matthias Liechti)教授らのチームが、スイスのバーゼル大学病院で臨床試験を進めている。
ピーター・ティールも幻覚剤治療に出資
これらの研究を通じ、MindMedはLSDを用いた治療実験で得られたデータや化合物の、世界的特許を取得しようとしている。
MindMedやCompass Pathwaysに加え、合成麻薬のMDMAをPTSD治療に用いようとしているNPOの「MAPS」などの団体は、言わば、サイケデリック薬品のルネッサンスをもたらそうとしている。
サイケデリック薬品の黄金期として知られるのは、LSDの使用が広まったサイケデリックカルチャー全盛期の1950年から1965年頃だった。当時はLSDを用いた数千もの研究が行われたが、幻覚作用が強すぎることが原因で、1970年頃には禁止薬物に指定された。
しかし、今ではベンチャー・キャピタルの支援を受けた複数のスタートアップ企業が、次世代の薬品開発を目指し、サイケデリック物質の研究を進めている。この分野にはヘッジファンド業界の富豪のスティーヴン・コーエンや、ハイアットホテルの創業一家出身のジョビー・プリツカー、GoDaddy創業者のボブ・パーソンズも投資を行っている。
さらに、ピーター・ティールはCompass Pathwaysの株式の7.54%を取得済みだ。MindMedの出資には、「シャークタンク」で知られるKevin O’Learyや、トムズシューズの創設者のブレイク・マイコスキーも参加している。
「世界はかつての時代から大きく変わり、かつて違法薬物だったサイケデリックドラッグも、別の利用法が考案されている」とラーンは話す。「かつてLSDと呼ばれていた違法なドラッグが実際のところ、鬱病や不安症の改善に役立つのであれば、昔の名前など関係なくなる」と彼は続けた。