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2020.10.05 11:00

ピーター・ティールも出資する「幻覚ドラッグ」の医療活用最前線

Vitalii Vodolazskyi / Shutterstock.com

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ニューヨークに本拠を置く不安やオピオイド中毒を治療する新薬の開発を目指す企業「MindMed」は9月28日、ナスダックに上場申請を行った。同社は幻覚作用を持つサイケデリックドラッグを、医療に役立てようとしている。

同社は現在、カナダのNEO取引所に上場しており、時価総額は1億9000万ドル(約200億円)となっている。MindMedの今回の上場申請は、幻覚キノコに含まれる意識変容成分のシロシビン(psilocybin)を、鬱病治療に用いるための特許を取得した企業「Compass Pathways」がナスダックに上場した数日後に行われた。

Compass PathwaysのIPOは、米国政府が違法薬物に指定する薬物が、安心できる投資対象であることを見せつけた。同社の株価は上場の数日後には、IPO価格から134%上昇した。

MindMedの共同創業者で共同CEOのJRラーンは、投資家たちはもはや、サイケデリックな薬物が持つポテンシャルを無視できなくなっていると話す。

「メンタルヘルスの治療を行う上で、サイケデリック薬ほど有効なものは非常に少ない。ウォール街の投資家は、これらの問題に対する新しいアプローチが必要であることを認識しており、それが違法なサイケデリック薬品でも構わないと考えている」と、ラーンは述べた。

投資銀行のカナコード・ジェニュイティのレポートによると、サイケデリック医薬品とサイケデリック支援療法の市場規模は、1000億ドルになる可能性があるという。

世界ではうつ病やPTSDなどの症状を抱える10億人の人々が居るが、これらの症状は幻覚物質で治療可能なことが、近年の研究結果で示されている。

MindMedは2つの研究を進めており、その1つは幻覚作用のあるイボガインの誘導体をベースにしたものだ。そしてもう1つは悪名高きサイケデリックドラッグとして知られる、リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)を用いた研究だ。

同社は、アフリカ西部の多年生の小灌木イボガから、「18-MC」と呼ばれる成分を取り出し、治療に役立てようとしている。18-MCは幻覚作用を持たないイボガインで、何百年も前から西アフリカの儀式では用いられており、最近ではオピオイド中毒の治療にも密かに用いられている。ただし、イボガイン自体は連邦政府によって違法薬物に指定されている。

MindMedのラーンは、18-MCを「オピオイド中毒の治療に役立つ抗生物質」にしようとしている。イボガインの合成誘導体である18-MCを共同開発した神経学者のスタンリー・グリック(Stanley D. Glick, Albany)は昨年、MindMedに入社し、オピオイド中毒の治療を目指す第2フェーズの実験の準備を進めている。
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編集=上田裕資

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