まずは「誠実、かつ謙虚で、協調性がある人」などが思い浮かぶのではないだろうか。確かにこれなら理想的だ。
しかし、こうした世間一般的な基準で得られる魅力には、その人ならではのキャラは感じにくい。ときには良識とは真逆の独特な個性が、エッジの効いた魅力になることもある。
生意気が魅力になるときとは
例えば、「謙虚」とは真逆の「生意気」が魅力になるときもある。
なぜ、それが魅力になるかといえば、生意気の「生」とは考え方が若いことで、つまり生意気とは、その人間が自力でなんとかやり抜こうという「意気」を若々しく発散しているからだ。
意気とは何かをなそうという積極的な心持ちだが、私たちは状況が最悪なときに、頼りになるのは案外この意気だということを経験的に知っている。しかも「生」なので若いのだ。
実際に、生意気な人は、その若いがゆえに反骨精神で逆境を跳ね飛ばし、なんとかしてしまうことがある。その結果、尊敬を集めたりするのだ。
協調性はないがユニークが魅力に
「協調性」には欠けるが、ユニークであるということが魅力になることもある。ユニークとは「無比、独自、唯一」という意味で、広義で捉えれば、人と違うということになる。
なぜ、人と違うことが魅力になるのかといえば、行き詰った問題などは、ユニークな考えを持つ人間によって解決されることがあるからだ。
ユニークには希少性もあるが、私たちの多くはユニークな存在になるのが怖い。他人の目が気になるし、同調せよという圧力にも弱い。しかし、ユニークで無比になるほど、集中して何か新しいものを見つけることができる。
対象に対して協調できないものを感じたら、むしろその違和感を大切にすることで、その人の魅力に繋がることもある。
らしさを守ったサルトルの魅力
その人に「らしさ」があると魅力的になる。らしさとは、存在感そのものだからだ。
らしさとは、自分らしくないことはしないという損得を超えた態度からできあがる。それが、ときには一部の人に対して誠実さを欠いたとしても、自らに対しての忠実さの強烈なアピールとなり、結果的に魅力に繋がる。
フランスの哲学者で作家のジャン=ポール・サルトルは、1964年にノーベル文学賞の受賞を辞退した。
理由は、自分が名誉を受ければ、読者に対して望ましくない圧力を欠けることになるからだと述べた。この行動は、サルトルの自分はあくまでも作家であり、何者にも規定されないというスタンスを守ったものとして、やはり彼の文学者としての魅力ともなっている。
いかがだろう。こうして「生意気、かつユニークで、らしさが際立つ人」も魅力的ではないだろうか。これらの魅力は、「誠実、かつ謙虚で、協調性がある人」とは違って、何かの結果を出すまでは非難されることが多いかもしれない。
しかし、その放つ力は絶大だ。他人に迷惑をかけない限りは、この本能にも基づいた魅力のエレメンツは自覚的に育てたいものだ。
連載:表現力をよくするレシピ
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