バイドゥは2019年、中国国営の自動車メーカー、第一汽車集団(FAW)と提携し、自動運転タクシー「紅旗EV」を開発した。この車は中国初の大量生産型ロボタクシーで、北京や広州をはじめとする複数の都市で無人運転試験に使われている(まだ試験のみ)。
バイドゥの開発チームの一部は、シリコンバレーに拠点を置き、自動運転車を動かすAIプログラムの開発を進めている。同社は、米国の特許法を用いて知的財産を守り、中国で製造した製品を、米国を含む全世界へと輸出する計画だ。
9月14日、バイドゥは北京で毎年開催している技術カンファレンス「百度世界大会(Baidu World)」で、アポロ・プロジェクトの一環として、同社初の完全自動運転車を披露した。
同社が開発したアポロのコンピューター頭脳は、ドライバーがいなくても車を運転できる。バイドゥはもともと、一介の検索エンジンとしてスタートした、中国版グーグルともいえる企業だ。その自動運転車プロジェクトは、中国が、電気自動車の分野でも、その自動車を動かすリチウムイオン電池でも、サプライチェーンの階層を急速に上昇しており、そしていま、自動運転テクノロジーを向上させていることを示す実例のひとつだ。
アポロとは要するに、自動運転車を操る百度の「サイロン」(『宇宙空母ギャラクティカ』に登場する機械生命体)だ。アポロ・プロジェクトでは、5G自動運転キットもリリースされている。百度が9月15日に述べたところによれば、そうした技術があらかじめ組み込まれた完全自動運転車の要件を満たす初の大量生産車も、まもなく登場するという。
いかにも中国らしく、バイドゥは価格で圧勝することになるだろう。同社の副総裁で、スマート運転事業グループ総経理の李震宇(Zhenyu Li)は、「アポロ車の世代が新しくなるたびに、性能は10倍になり、コストは半減するだろう」と語る。李は、アポロの頭脳を「経験豊富なAIドライバー」と表現する。つまり、人間のドライバーの関与なしに車をコントロールできるAIシステムということだ。
これまでのところアポロ・プラットフォームは、一度も事故を起こさずに300万マイル(約480万km)を超える道路走行試験をこなし、世界各地の27都市で10万人を超える乗客を運んできた。アポロの「経験豊富なAIドライバーは、よく訓練されている」と、李はカンファレンスで語った。