ビジネス

2020.10.06 08:00

バズで市場を塗り替えた 髭剃りスタートアップの意外な勝ち筋


「月に20ドルも払って、いろいろ余計な機能がついた10枚刃の髭剃りなんて不要だ。俺の親父は一枚刃だった。ウチのは1ドルでスゴくイイぜ」

字幕には「shave time, shave money(shaveとsaveをかけて、時と金を節約せよの意)」。このなんともいえないシュールで印象的な動画は、あっという間に消費者のハートをつかみ、爆発的な勢いでファンとユーザーを増やすことになります。


DollarShaveClub.com「Our Blades Are F***ing Great」

さらに、替刃カートリッジを毎月一定額で毎月届けるサブスクリプションを取り入れたことも、大きな話題となりました。

大手の替刃カートリッジは1つで4~6ドル。一方、ダラー・シェイプ・クラブは、低価格コースなら月1ドル(+送料2ドル)で2枚刃カートリッジを5個、毎月届けてくれるというわけです。

価格に敏感な多くの米国ユーザーは、高額な替刃を買い置きするのはまれです。小さくて高価なカートリッジは、米国では小売店舗のカウンター裏や鍵付きショーケースに収められることが多いために買いづらいこともユーザーのストレスです。「(高価かもしれないが)替刃を長く使っていて汚いと彼女に言われた」なんてことも。

このように、高額の高性能な髭剃りは、ユーザーにとって、かえって困った商品になっていたのです。宇宙工学を含む優秀なエンジニアを雇い何百億円もかけて製品の技術的なイノベーションと改良に力を注いでも、肝心のユーザーは不満でいっぱい。そこで、ユーザーの視点で髭剃り体験を劇的に改善するダラー・シェイプ・クラブが歓迎されたというわけです。

(超高性能でなくとも)当たり前に剃れる替刃を毎月自動的に送ってくれれば面倒もないし、毎週替える方がハッピー。ちなみに、「とてもスムーズに剃れた」というダラー・シェイプ・クラブのユーザーの喜びの声が多くツイッターにあげられました。やはり日が経った刃で剃っている人が多かったのかもしれませんね。

こうして、2015年には、「Razor Sales Move Online, Away From Gillette(髭剃りの売上は、ジレットからオンラインに移っている)」という見出し(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)が、メディアで踊ることになるのです。

こうしてダラー・シェイブ・クラブは、発売からたった3年で、髭剃りのサブスクリプションで数百万人の顧客をつかみました。
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文=本荘修二

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