コロナからの復興策で「グリーンリカバリー」が加速するイタリアの新市場

イータリーが急ピッチで開発を進めるグリーンプロダクトの総合デパート「Green Pea」イメージ図


今年に入って世界的に見てもヨーロッパ全体の「グリーンジョブ」の求人は約50%増加したことがLinkedIn社の調査で報告されている。ヨーロッパの持続可能性の分野の専門家の数は、昨年から13%増加し、世界平均の7.5%という成長率を考えると驚異的だ。そういった欧州のグリーンビジネスのトッププレイヤーはもちろん環境先進国である北欧やドイツ、ルクセンブルグなどに多く集まっているが、実はイタリアも2019年の時点で300万件を超えるグリーンジョブの集積地となっており、これは総雇用の13.4%を占めている。

グリーンビジネスでは、スタートアップ活況


中でもイタリアがEU第2位を誇っているのが、廃棄物回収や再生利用の分野で、資源効率・循環経済の技術では数多くのスタートアップが注目を集めている。

2019年の時点で約43万社以上ものイタリア企業が何らかグリーンプロダクト開発や技術に投資をしているのだから、環境意識の高まった2020年以降はさらに加速されるだろう。

家族経営の零細企業が多く、老舗と言われる長寿会社が多いイタリアだが、このグリーン市場は35歳以下の若い起業家が率いている活況な分野である。ミラノやトリノなどは今後このようなサーキュラーエコノミーの担い手であるグリーンスタートアップのメッカになっていくことも予想される。

さらに、いまラグジュアリーブランドがますますグリーン投資に積極的だ。最近だとGucciが再生素材、オーガニック素材などの持続可能な原料による素材を使用した「Gucci Off the Grid collection」を発表したり、新しいインスタグラムアカウント「@GucciEquilibrium」で社全体で取り組む環境負荷の削減や自然保護活動を発信し、事業全体の環境負荷を前年比で21%削減成功したことを発表し、話題となった。

ほかにも、世界の超富裕層がコロナ禍でワーケーションの避難先とした「スーパーヨット」も実は北イタリアの沿岸に企業が集中しており、24メートル以上クラスのヨットでイタリアは世界一の製造国だ。このような分野においてもグリーンであることがヨットの性能のみならずインテリアやサービス全般に求められておりイタリアの本領発揮が期待される分野だ。

こういった背景からも、クラッシックな食品小売を束ねるプラットフォームであるイータリーが、グリーンを主軸とした総合ブランドのプラットフォームへと変化していく姿に、イタリアの市場のいまが見えてくるだろう。イタリアは自国の再生をかけて、独特の美意識とものづくりの職人技をグリーンビジネスに組み込み新たな市場を切り拓こうとしているのだ。


連載:イタリア発「サステナブルな衣食住遊イノベーション」
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文=齋藤由佳子

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