経済・社会

2020.09.29 07:30

コロナからの復興策で「グリーンリカバリー」が加速するイタリアの新市場

イータリーが急ピッチで開発を進めるグリーンプロダクトの総合デパート「Green Pea」イメージ図


建物全体もサステナブルな建材が使われているだけでなく、かつてのトリノの工業地跡を緑に変えるリジェネレイティブ(再生型)な建造物で、空気を浄化したり電力を生み出す機能が搭載されている。最上階には絶景が広がるインフィニティプールを有したプライベートクラブがあり、年間50ユーロから300ユーロの会員制クラブに入ればショッピングで特典も得られる。
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参画予定のブランドを見ると、高級スポーツカーやエルメネジルド・ゼニアなど有名ブランド店も入るようだが、日本で超有名なイタリアブランドというよりは、「新しいエコブランドを探しに行く」という楽しみ方がおすすめだ。

さらに興味深いのは、毎日をグリーンにする電力会社や携帯電話、銀行など生活系のサービス事業者も多く出店を予定し、環境や循環経済に貢献する新たなサービスを提供することだ。その中でもグリーンなクリーニング店まで用意されているのは感心した。

あまり知られていないかもしれないが、多くのクリーニング店では実は重篤な健康障害の恐れもある有害物質である溶剤のテトラクロロエチレンや石油系の有機溶剤を利用するので非常に環境負荷が高いのだ。確かにグリーンファッションを購入しても、そのメンテナンスがサステナブルでなければ矛盾する。
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この辺りへ意識は、さすがEUでもトップクラスの循環経済を築いているイタリアの企業ならではと言えるのではないだろうか。

Green Pea
Green Peaイメージ図 建物にもサステナブルな建材が使われ、豊かな植林が施される予定だ

ラグジュアリーもグリーンに。実はEUトップクラスのイタリア 


 実はGreen Peaはイタリア全体でダイナミックに動いているグリーンビジネスの一部に過ぎない。

ミラノでは、大気汚染の改善と気候変動への対応として2030年までに300万本を植樹する計画が進んでおり、使われていない鉄道駅周辺を7つの公園につく作り替え、総面積1000万平方メートルにおよぶ緑の拡充を建物の屋根の上を活用して実現し、市街地の中心に菜園やぶどう畑をつくり、食糧を都市で生産しようという計画もある。

いまもなお都市に世界人口の58%が集まっており、2050年ごろまでには地球上で生産された食糧の8割が都市に住む人に消費されるという懸念を受け、都市とその近郊での食の自給自足に向けた開発投資は世界的なテーマだ。2026年に冬季オリンピックの開催がミラノと近郊のコルティナダンペッツォに決まったこともあり、この自給自足型のグリーンシティ化の流れはますます加速しそうだ。
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文=齋藤由佳子

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