新しいテクノロジーへの投資は、必然的に大きな不確実性が伴います。投資家の期待に見合ったリスクおよびリターンのプロファイルを政府が作成しなければならない場合もあります。官民パートナーシップおよびガバナンスのベストプラクティスを取り入れ、利害関係者間でリスクを適切に移転することも一案です。
政府機関にインフラ・テックを後押しする体制が整っておらず、断片化した構造がイノベーションとデータ共有を妨げることは、珍しくありません。そのため、変革に重点的に取り組む公的機関を新設すると、新しいアイデアの普及と国の適応力および潜在能力の向上を促すことができます。
最後に、政府はインフラ・テックを受け入れるスキルを強化する必要があります。そのためには、企業に対して労働者の訓練を奨励し、公的な研修プログラムを策定し、学界と産業界の連携を促すことが必要です。
5. 民間資本を呼び込む
収益源の予測が不可能で、リスクの高いインフラ・テックベンチャーへの投資意欲をかき立てるには、どうすればいいでしょうか。
これまで多く試みられてきたアプローチのひとつが、特にプロジェクトの初期と後期の段階で、分野助成金を付与する方法です。これらは、租税優遇措置、低利融資、研究開発奨励金の形で提供することができ、米国や欧州、中国で行われた再生可能エネルギーへの助成金は、国内での採用を加速させ、コストの削減をもたらしました。
もうひとつの選択肢は、多数の小規模プロジェクトをより大きな集合体に束ねて、リスクを広く分散させることです。従量課金制や利用者払い制など、斬新でダイナミックな価格設定も、確実な収入源によって投資家の信頼を高める目的で考案されています。
世界持続可能エネルギー・イノベーション基金は、世界経済フォーラムとKPMGが最近立ち上げたイニシアティブです。民間投資家と公的投資家をひとつに束ね、国の垣根を越えて活動することを目指して設計された、初の世界的基金です。
この基金は、温室効果ガスの排出を大幅に削減する可能性を持つ製品やソリューションに投資対象を限定しています。低・中所得国に照準を絞り、投資家に競争力のあるリターンを提供します。同様に、持続可能性を目標に掲げ、革新的で環境に優しいインフラ・テックへの投資を喚起する基金が、ほかにも出現することが期待されます。
インフラ・テックのエコシステムの構築
コスト効率が高く、スマートで、環境にやさしく、長期にわたって持続可能なインフラを実現するインフラ・テックは、明るく新しい未来を約束します。インフラ・テックは、市民と、政府や物理的な世界との関わり方を変える可能性も秘めています。
すべての政府が目指すべきは、公共・民間部門、投資家、資金提供者、および利用者という複数プレーヤーから成る、効果的なインフラ・テックのエコシステムの構築です。こうしたシステムが整備されれば、持続可能で包摂的な成長の基礎を築くことができるのです。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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