実際に凸凹の悪路を走ってみると、その新しいサスペンションの柔軟性がつくづく伝わってくる。旧型車より安定性とトラクション性がよくなっただけでなく、水溜りや穴からくる衝撃はだいぶ減ったし、乗り心地と静粛性はクラストップと言える。意外だったのはキャビンに入ってくるロードノイズの小ささだ。その静粛性はGクラスやラングラーを上回り、普通のSUVと比べられるレベルに達していた。
さて、パワートレーンに移ろう。日本仕様のエンジンは最高出力300PSの2リッター直4ガソリンターボのみ。8段ATとの組み合わせで、燃費は8.3km/リッターとメーカー側が言っているけど、僕が乗った感覚でも大体そんな燃費になるだろう。車重は2240kgと重いけど、このエンジンではパワー不足を感じない。もちろん、アクセルを思い切り踏んでも爆発的な加速性はないけど、普通に走るのには充分だし、高速道で合流するにしてもパワー感は満足で頷ける。
やはり、新しいシャシーとサスペンションが付いているので、ボディロールは抑えられているし、ステアリングは旧型と比べて、より正確で路面からのフィードバックがある。オンロードの走りは意外に良かった。と言うのは、オフロード用のタイヤを履いているのに、車両の安定性、静粛性、乗り心地はもっと高級な線路を狙った「弟」のランドローバー・ディスカバリーに近づいているのだ。
室内デザインも外観に負けないほど一新した。さすがレンジローバーを作っていると思わせるシックさと高級感が漂う。センタークラスターに配されたタッチスクリーンに触ると、ナビや多くの車両コントロールにアクセスできる。オフロード向けの走行モード切り替え機構「テレインレスポンス」に加え、道路状況に合わせた最適な車両設定を自動選択する「テレインレスポンス2」、パワートレイン、ステアリング、ディファレンシャル、トラクションコントロールの設定を個別に調整できる「コンフィギュラブルテレインレスポンス」も用意される。
スイッチ類はわかりやすいし、シートのホールド性や座り心地もトップクラスだ。視認性も360度見渡してみて、なかなか良い。どこからでも巨匠ジェリー・マクガバンのデザインセンスが感じられる仕業だ。
ハードコアでクールなSUVというと、ディフェンダー、ジープ・ラングラー、メルセデスベンツGクラスがそれぞれ根強いファンベースを持っている。外観スタイリングは主観的なので好き嫌いが激しいだろうけど、外観は格好良くて、オフロードの軽快な走り、オンロードの安定した走りの持ち主となると、589万円からの頑丈でハイテクなディフェンダーは、SUVバイヤーを大いに悩ます1台ではないだろうか。