マイクロソフトは9月22日、クラウドベースの通信サービス「Azure Communication Services」の立ち上げを宣言した。このプラットフォームは、開発者がビデオ会議やチャットを組み合わせ、独自のウェブ会議アプリを開発できるようにするもので、来月からは伝統的なコミュニケーション手段である電話にも対応する。
Twilioは、2016年にIPOを果たし時価総額340億ドル(約3.6兆円)に成長したが、マイクロソフトは同社を打ち破ろうとしている。
Twilioはクラウド通信分野で25%のシェアを握っている。IDCによると、この市場の規模は2019年時点で42億ドルで、年間33%のペースで拡大を続けているという。
マイクロソフトの新サービスは、同社とTwilioとの関係にも影響を与えそうだ。マイクロソフトにとってTwilioは、同社のクラウドのAzureを利用する顧客でもある。Twilioはこの件についてのコメントを拒否した。
マイクロソフトのバイスプレジデントのScott Van Vlietは、以前のインタビューでTwilioとの将来的な関係については言及を避けつつ、「当社は顧客が、マイクロソフトのプロダクトを最もベストな選択肢として捉えてくれることを期待している」と述べていた。
Twilioによると、同社の通信サービスを利用している企業は約20万社にのぼり、今年第2四半期の売上は4億ドルに達していた。「クラウドベースのコミュニケーション分野は歴史が浅く、ヘルスケアや小売業などで巨大な成長余地があるため、Twilioは成長を続けるはずだ」と、ローゼンブラット証券のアナリスト、ライアン・クーンツも述べている。
しかし、マイクロソフトはTwilioの強敵になりそうだ。マイクロソフトのTeamsは、毎日7500万人以上の人々に利用されており、同社は新たなコミュニケーションサービスを売り込むための膨大な顧客基盤を持っている。
マイクロソフトはTwilioを駆逐する?
さらに、Twilioにとってもう一つの重要な脅威は、マイクロソフトがGitHubを保有している事だ。GitHubは5000万人以上の開発者がアプリ開発に使用しており、彼らの多くはTwilioを利用中だが、マイクロソフトは自社のサービスを彼らに売り込むことになりそうだ。
マイクロソフトは、米国ではFTC(連邦取引委員会)による独禁法違反の追求を回避したが、欧州ではTeamsのオペレーションが独禁法違反であるとして、Slackに提訴されている。
2017年に始動したTeamsの利用者数はパンデミックを受けて急拡大し、Slackの1200万人を大幅に上回っている。
クラウド通信サービス分野はまだ成長を続けているため、アナリストはマイクロソフトのTwilioに対する攻勢をゼロサムゲームとは見ていない。しかし、一部のアナリストは、マイクロソフトの広範なリーチに注目している。
「小規模な勢力は、巨大勢力の射程範囲に入った」と、ガートナーのアナリストであるテッド・チェンバーリンは述べている。「羊飼いの少年ダビデは、巨人の兵士ゴリアテには勝てない」と彼は話した。