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Photo by Justin Sullivan/Getty Images

米カリフォルニア州のギャビン・ニューソム知事は23日、「2035年までに、州内で販売される新車をすべてゼロ・エミッション(排ガスを出さない)車にする」と表明した。行政命令によって実施するという。

だが、実際のところ、彼には15年後のカリフォルニア州の法律を決める権限はない。そもそも、ゼロ・エミッション車の義務づけが15年後に実現可能なのかどうかも、彼は知らないだろう。

要するに、ニューソムの今回の発表は、あざとい政治的ポーズなのだ。この点では、インドの政治家に先例がある。

ピユーシュ・ゴヤル。インドの鉄道相兼商工相だ。2017年春、当時電力相だったゴヤルは、「われわれは電気自動車を大々的に導入していく。(中略)2030年までに、ガソリン車やディーゼル車は国内で1台も販売されないようにすべきだ」と述べた。ゴヤルの表現(should=べき)はニューソムのもの(will=する)ほど強くないとはいえ、言っていることはほぼ同じだ。

ゴヤルの案は、まったく合理的でもなければ現実的でもなかった。インドは地理的に多様な(カリフォルニアよりもはるかに)国であり、ヒマラヤの山道や中部のジャングル道は、電気自動車(EV)ではとても対応できないだろう。少なくとも、大きな技術的進歩があったり、僻地などでも充電スタンドが整備されたりするまでは。

ゴヤルの発言は、政治的な思惑からのものだった。代替エネルギーやEVは良さそうなものに聞こえるし、それを持ち出せば、インドで伝統的に好まれる経済保護主義的な立場の人たちにもアピールできるからだ。

ところが、現実にはそれから1年もたたないうちに、インド企業は再び外国で油田開発に乗り出し、石油精製大手のインディアン・オイルはアラブ首長国連邦(UAE)の海底油田開発の権益を10%取得した。こうした動きはインド政府からも歓迎された。

ゴヤルの発言は政略であって、真剣な政策ではなかったということだ。

ニューソムの命令も同じだ。まず、15年後に発効すると自信をもって断言できるような行政命令など、彼に出せるはずがない。たとえば、この行政命令は、議会や裁判所によって変更されたり、覆されたりする可能性もある。

さらにニューソムは、15年後、EVに関してどのような技術が実用化されているかも知らない。その技術は、カリフォルニア州の有権者や政治献金者を満足させられる水準には達していないかもしれない。

加えて、カリフォルニア州では電力供給をめぐる問題もある。州内の電力網はすでに過剰な負荷がかかっており、今夏は計画停電も余儀なくされた。ニューマンの計画に従えば、何百万台もの車が同時に充電する必要が出てくるが、これは現行のシステムでは対応できない。

ニューマンはこの日の発表により、ある程度注目を集めることができた。注目を集めるのは、たしかに政治家の仕事の大きな部分を占めている。実際、彼は環境保護主義者の友人やEVファン、イーロン・マスクのようなEVメーカー関係者からは絶賛されるのだろう。

しかし、だまされてはいけない。これは政治ではなく、追従なのだ。カリフォルニア州議会がこの問題について採決することになれば、人々は真剣に考えるようになるだろう。

編集=江戸伸禎

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