バイデン氏はよくて石破陣営はダメ? 任天堂「あつ森」政治利用の是非

「あつまれどうぶつの森」がさまざまな方法で用いられている。(Photo by Shutterstock)


米軍に入隊する人の中には経済的に困窮している若者も多く、学費ローンの支払いのために兵士になる人も多いという。シリーズ最初の作品がリリースされた2002年当時は無料ゲームが現在ほど多くなく、無料で遊べることはこういった層にリーチするために効果的だった。

このゲームを通じて米軍は、アメリカ最大級のゲームイベントに参加し、装甲車を会場の最も目立つところに配置して威圧的なキャンペーンを展開したという。日本でもアメリカでもゲームが政治的キャンペーンに用いられてきた事例を見ることができるが、Jiniはその理由をこう指摘する。

「ゲームはとりわけ若年層が多く利用しているものです。その中で政治的なキャンペーンをするということは、若者に対して自分たちの存在をアピールしたいという意図があります。最近は新型コロナの影響で外で演説ができなくなり、テレビのように広く訴えかけることができるメディアが一気に求心力を失っている中で、ゲームを通じて、若者に接近したいと考えるのは理にかなっていると思います」

ゲームを通じた政治的キャンペーンの留意点


政治とゲームの距離は密接になってきているのだ。しかし「America’s Army」の例を聞くと、どこか怖いような感情を覚える。ゲームの世界が政治的に利用されるということは、気づかぬうちにある思想に取り込まれていることにもなりかねないのではないか、と。この点について、Jiniはどう考えているのだろうか。

「政治的無関心の高まる現代社会において、ゲームを通じて若者に政治への関心を持たせることはすごく大事ではあるんです。ただその上で若者に明確に狙いを定めてキャンペーンをやるには、若者が好みがちな感情的で、いわゆるポピュリズム的なキャンペーンが混入しないか、かなり注視しなくてはいけない点だと思います」

「America’s Army」については、「これは米軍になりきるというゲームなんですが、それはゲームならではの詭弁ですよね。ゲームの中で死んでもゲームオーバーになるだけですが、現実ではイラクやアフガニスタンに送られて帰って来なかった兵士もたくさんいます。なのでこの作品のような例を見ると、若者を狙い撃ちにしてるからこそ、あまりにも極端な、あるいは甘すぎる話が出てくる可能性を常に疑う必要があると思います。その上でどういった政治議論がなされるべきかを検討すべきです」と話す。
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文=河村優 編集=督あかり

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