子どもは「評価」のためにも長く待つ あの有名な実験が示唆

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「マシュマロ実験」とは、後でより大きな満足を得るために目の前の欲求をおさえる忍耐力を子どもたちがどのくらい持っているのかを測定するために行われた、有名な心理実験だ。

最初に実験が行われたのは1970年代だ。米国の心理学者ウォルター・ミシェル(Walter Mischel)は、部屋に子どもを座らせ、目の前にマシュマロを1つ置いた。そして、自分が戻ってくるまでそのマシュマロを食べずに待っていられたら、マシュマロを1つではなく2つあげると伝えた。

この実験に参加した子どもたちについては1988年に追跡調査が行われ、忍耐力がある子どもほど、成績が優れていることが明らかになった。また、行動をめぐる問題が少なく、大学進学適性試験(SAT)の点数が高いことや、ストレスへの対応力に優れ、人生で成功を収める可能性が高いことも示された。

2020年8月には、心理科学ジャーナル『Psychological Science』で、マシュマロ実験を発展させた新たな研究の成果が発表された。そこでは、「待っていられた時間の長さを教師に伝える」と言われた子どもたちは、他の条件の場合と比べて、待つ時間がほぼ2倍に伸びたことが示されている。

研究論文の筆頭著者である、カリフォルニア大学サンディエゴ校のゲイル・ヘイマン(Gail Heyman)教授は声明で、「かの有名なマシュマロ実験は、重要なスキルである自制心を育むことについて、研究者の考え方を形成した」と述べている。

「私たちの新たな研究は、マシュマロ実験のタスクが、自制心を測定するだけでなく、他人からの評価を意識するという、同じように重要なスキルを測定しうることを示唆している」

この研究は、中国の3歳から4歳の幼稚園児273人を対象に実施された。そして、最初の「マシュマロ実験」と同じく、子どもたちには、「おやつをすぐに食べる」か、「少し待ってもっとたくさんのおやつをもらうか」という選択肢が与えられた。

実験は、次のような3つの条件下で行われた。ひとつめの条件では、子どもたちは待てた時間を「教師」に伝えると知らされた。ふたつめの条件では、待てた時間を「同級生」に伝えると知らされた。最後は「基準」となる条件で、子どもたちは何の指示も与えられなかった。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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