DXで高まる「リアル」の価値──会わなければできないことは何なのか

ウィズコロナの時代には「リアル」で人と会う価値が上がりつつある(Shutterstock)

新型コロナウイルスの感染拡大によって、私たちの生活は大きく変貌している。多くの人が感染防止のために自らの行動に制限をかけ、移動を控え、なるべく人と接触をしない生活を心掛けるようになった。感染拡大への不安から消費を抑えるようにもなっている。

しかし、生活を維持するためには経済を止めてしまうわけにはいかない。だとすれば、新型コロナと共存することを覚悟し、人々は新しい生活様式、企業は新しい事業展開を模索していかねばならないだろう。

コロナ禍でも何とか事業を継続させていくために、企業はデジタル技術を積極的に活用し始めている。従業員にリモートワークを推奨し始めた企業も少なくないだろう。コロナ禍以前から「デジタルシフト」は進みだしていたが、新型コロナがそのスピードを加速させたことは間違いない。従来であれば10年かかっていた変化が、わずか1~2年で実現してしまうような勢いだ。

それでも現段階では、うまく「デジタル」を使いこなして生産性をあげている企業も、逆に環境が整わず混乱が続いている企業も混在している。外食業はその好例だといえる。「デジタル」を駆使してテイクアウトやデリバリーを増やし、売上を伸ばしている企業がある反面、「いつかは戻るだろう」と追い風が吹くのを待ち、行き詰まりつつある企業もある。

新型コロナの打撃を大きく受けた外食産業の今後の明暗を分けるのは、「デジタルシフト」の成功にかかっていると言っても過言ではない。

デジタルシフトで高まる「リアル」の価値


しかし「デジタルをうまく活用すること」は、生活のあらゆる場面を「デジタル」で代替することではない。むしろ「デジタルシフト」によって積極的に模索していくべきなのは、リアルとインターネットをうまく融合した新しいライフスタイルだ。

新型コロナの影響で、奇しくも生活の多くの場面に「デジタル」が浸透することになった。だが、その結果として逆説的にも、リアルでの交流の価値が上がったように感じた人も少なくないだろう。新型コロナの影響で気づかされたことは、今まで当たり前だと思っていた「リアルでの交流」が、実は貴重で大切なものであったということなのだ。
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文=鈴木康弘

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