例えば、ある音楽プロダクションの経営者は「これから音楽ライブはネット配信が主流になるだろう。しかしリアルでのライブも、ソーシャルディスタンスさえ確保できれば、価格が10倍になっても需要はあり続けるだろう」と述べていた。
今後はインターネットを介した交流が生活のあらゆる場面で主流になっていくと予想されるが、それはリアルでの交流がより貴重で、価値のあるものになっていくということでもあるのだ。
この意味で、コロナ禍は今まで当たり前だと考えていたリアルな交流の価値を見なおす良いきっかけとなるだろう。「デジタル」という選択肢を得たことで、私たちは本当に人と会わなければできないこととはなんなのかを真剣に考えるようになった。
新型コロナの影響により、飲食店をデリバリーで活用したいという需要も増加している(Getty Images)
個人の目線で考えれば、基本的には優先度の低いものからインターネットでの交流に切り替えていけば良い。しかし企業の目線に立つ場合は、「インターネット」か「リアル」かの線引きは、画一的なものではなく、消費者のニーズに合わせて変化していく必要がある。
外食業を例に考えてみよう。コロナ禍でも当然、消費者の中には店内飲食を好む人もいれば、テイクアウトを好む人も、デリバリーを好む人もいる。だとすれば、「デジタルシフト」で達成すべきことは、インターネットを用いてテイクアウトやデリバリーを増やし、店内飲食を極力減らすことではない。そうではなく、消費者が個人の好みに合わせて、自由にサービスの形態を選択できるよう、「デジタル」技術を介して工夫をすることなのだ。
これからの企業は「リアルとネットの融合」を求められるようになる。このような変化に柔軟に対応できる企業は、新型コロナの収束が見えない状況でも成長のチャンスを広げてゆくだろう。逆に、これらの変化に柔軟に対応できない企業は、衰退の恐れがでてくるはずだ。
そしてこのような「デジタルシフト」に伴う企業の変化に沿って、ゆくゆくは産業構造もコロナと共存できる形へと大きく変化していくのではないだろうか。
次回は、「新たな日常」による産業構造の変化につき解説していく。
連載:デジタルで人生を豊かにする「デジタブルライフ」
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