人事評価制度とは? 目的と種類を理解し、最適なシステムを導入する方法

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最新のトレンドを反映した人事評価制度を導入している事例を3つ紹介。メルカリ、アドビシステムズ、ISAO
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人事評価の最新トレンド


ここまでは、従来からある一般的な評価方法を解説してきた。しかし、近年は各企業の事業特性に合わせた人事評価を行うなど多様化している。

この章では多様化する人事評価の中で、より注目されている最新トレンドを事例とともにご紹介しよう。

人事評価のトレンド


1. リアルタイム

一般的な人事評価では、半年に1回もしくは年に1回といった長期スパンで行うことが多かったが、記憶を遡らないといけないため、正確な評価が出来ず時間がかかっていた。

そこで、「リアルタイム」でフィードバックなどを行うようにし、その情報を集計して人事評価をするというやり方が増えている。

2. 360度評価

評価方法についての章でも解説したが、360度評価とは上下(上司や部下)左右(同僚)あらゆる角度から従業員を評価する制度のことで、仕事に取り組む姿勢などを評価するのに適した方法だ。

最近では、仕事への姿勢や成果を褒めたり認めたりするだけでなく、それと共に少額の報酬を送り合う「ピアボーナス」という仕組みを導入する企業も増えている。

3. バリュー評価

バリュー評価とは、会社の価値観を行動指針に落とし込み、この行動指針にどれだけ取り組めたかを評価する方法。

物やサービスが飽和し、スピード感や行動力が必要な時代。従業員に「この会社の価値は何だろう?」と考えさせ、自発的に行動させることで企業のさらなる発展が見込める。

4. 情報のオープン化

人事評価や等級は非公開にすることが一般的だった。しかし、あえてこれらを公開することで、従業員の人事評価に対する納得感を高めることができる。

また、評価や等級だけでなく評価の基準や過程をオープンにすることで、どうすれば自身の評価を上げることができるのか把握でき、モチベーションの向上に寄与すると言えよう。

最新のトレンドを反映した人事評価制度を導入している事例


メルカリ


メルカリは、「ピアボーナス制度」を取り入れており、バリュー評価を可視化できるように工夫している。

具体的には「mertip(メルチップ)」と呼ばれる制度で、従業員同士でリアルタイムに感謝、賞賛し合うと同時に、インセンティブとして一定額の金額を贈り合えるようにしている。

感謝を目に見えて伝えることができるため、チーム内や他部署との仕事の調整がしやすくなったり、従業員同士で「仕事を見てくれている」感を感じることができるようになったたりと、仕事に対する満足度が向上しているようだ。

また、このメルチップの情報を評価時期に参照できるようにすることで、より適切なバリュー評価を実現している。

参考:贈りあえるピアボーナス(成果給)制度『mertip(メルチップ)』を導入しました。

アドビシステムズ


アドビシステムズは、「チェックイン」と呼ばれる制度を導入しており、業務進捗についてではなく「私について」上司と従業員が定期的な面談を行うことで関係性を構築することに成功している。

また、等級やランク付けなどの評価を廃止し、上司の給与の裁量権を任せることで、従業員の人事評価に対する満足度が上がり、離職率の低下にも貢献している。

参考:「Check-in(チェックイン)」~双方向のコミュニケーションを大切にするアドビの評価制度~

ISAO


ISAOでは一般的な等級制度をアレンジして、部署や管理職が不在の「フラット」で「権威をつくらない」等級制度を実現している。

また、評価してくれる人を自ら指名することができ、2〜7名の人からの360度評価に基づいて等級が決められる。これにより、これまで管理職だった人は部下の育成責任から解放され、自身のキャリア形成に専念できる。

さらに、評価者を自分で選ぶことができるため、自身の評価への納得感が高まっているようだ。

参考:評価者を「自分で」選ぶ。通年リアルタイムで昇降級する「権威を作らない」等級制度


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文=小野祐紀

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