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が、この問題は「政治問題」ではなく「人権問題」であり、IOCのこのような姿勢に疑問を投げかける声は高まっている。とりわけアスリートのオリンピック大会での“いかなる政治的・宗教的・人種的な宣伝活動も認められない”とするオリンピック憲章第50条は、国際連合の人権宣言に違反しているとして、アメリカオリンピック・パラリンピック委員会やカナダのアンチ・ドーピング委員会からIOCに対して、「改訂」や「削除」の要求が出ている。

東京オリンピック・パラリンピックを開催するなら……というテーマから、かなり広がりすぎたと思う人もいるかもしれない。が、「問題を根本的に考え直す」には、現在のコロナ禍こそ大きなチャンスである。

どんな形での開催になるのか? 
観客はどれくらい入るのか? 
それとも無観客になるのか? 
競技数、種目数は減らさないのか? 
選手数は減るのか?……それらの詳細は、まだわからない。

が、現在私が望んでいることはただ一つ。オリンピックやパラリンピックに参加する人(選手・コーチ・審判員・役員など)は、すべて選手村に入るのを義務づけることだ。

最近ではメダル獲得を狙って、参加国によってはホテルを借り切り、自国の選手を特別に扱う国もあるようだが、それはあきらかにオリンピックの趣旨に反している。オリンピックとは、人々がスポーツを競い合うなかで世界平和を築くことが目的だろう。それにはスポーツ以外の場所でも世界中の選手の交流が求められるはずだ。

その中心となる場所は選手村であり、できれば役員もコーチも審判員も、もちろんトーマス・バッハIOC会長もIOC役員も、日本の組織委員会の森喜朗会長も役員も、誰もが選手村で寝起きして、世界各国の選手たちと世界平和への道を語り合い、そのためにオリンピックやパラリンピックを将来どのように変えていけばいいのか、どのように進化させていけばいいのかを話し合うべきだろう。


IOC会長のトーマス・バッハ(Photo by Patrick Semansky-Pool/Getty Images)


コロナ禍で選手や役員がどれだけ減るのかわからないが、すべての関係者(できるだけ多くの関係者)の選手村への集中は、効果的といえるはずだ。

それに、これまでは高級ホテルのスイートルームに寝泊まりしていた「五輪貴族」と呼ばれる人々も、選手と同じ選手村で世界平和について語り合う。それこそオリンピックの「原点」と言えるものが誕生する瞬間と言えるのではないだろうか?


玉木正之◎スポーツ文化評論家。1952年、京都市生まれ。東京大学在学中から新聞で執筆活動を開始。3年で中退後、ミニコミ出版の編集者等を経てフリーの雑誌記者(小学館『GORO』)になる。その後、日本初のスポーツライター、音楽評論家、小説家、放送作家として活躍。現在は日本福祉大学で客員教授も務める。スポーツジャーナリズム・メディア研究会・発起人メンバー。


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文=玉木正之 編集=宇藤智子

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