そうした見方は誤りだが、今回のデータが、不健康が病気による死亡リスクを高めているという米国の現状をあらたて浮き彫りにしたのも確かだ。
CDCの9月2日の発表によると、残り94%の死者は糖尿病や心疾患、肥満といった「併存疾患」を抱えていた。そのためネット上では、新型コロナによる米国の実際の死者は1万人程度にすぎず、全米規模の経済や社会、教育のロックダウン(閉鎖措置)は不必要だったとする声も上がった。
だが、じつのところ、医師による死亡報告では複数の死亡原因が記載されるのが普通なのだ。呼吸不全など、新型コロナウイルスへの感染が引き起こした可能性のある症状も、その一つに含まれることが多いということだ。
さらに言えば、過去の死者数を基にした予想死者数よりも多い「超過死亡」は、米国では新型コロナによる死者として報告されている数とほぼ同じとなっている。
とはいえ、CDCのデータは重要な点を突いている。主に生活習慣に起因する健康状態の悪さのために、米国人は新型コロナに対してきわめて脆弱だという点だ。
米国の新型コロナ関連の死者は人口100万人あたり56人で、カナダの2倍強、ドイツの5倍にのぼっている。そのため、連邦政府や州政府が対応を誤ったという批判もある。たしかに、それはそのとおりかもしれない。
死者拡大に見え隠れする「生活習慣病」
ただ、米国は今回のパンデミック(世界的大流行)を、ほかの先進国に比べて、国民の健康状態がはるかに悪いなかで迎えたというのも事実だ。たとえば、米国の新型コロナによる死者のうち、2万7000人超(16%)は糖尿病も患っていた。また、4%は肥満だった。米国人の40%は肥満で、この割合は先進国のなかで最も高く、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の2倍超だ。