米国は心疾患による死亡率も、欧州やアジアの大半の国より高い。新型コロナによる米国人死者のうち、22%は高血圧も患っていた。もし米国人の健康状態がほかの高所得国と同程度なら、新型コロナウイルス感染者の死者はずっと少なかった可能性がある。
新型コロナの併存疾患は、大半が生活習慣にかかわるものだ。開業医らの話によると、たとえば2型糖尿病の患者は、自分の現在の体重はわかっているし、それがどう病気に関わるかも説明できる。さらに、どうやれば減量できるかも知っている。しかし、ただたんに、それを実行することができないのだという。
対策として、砂糖を含む飲み物に「砂糖税」を課すことを訴える人もいるが、問題は砂糖だけではない。一例を挙げれば、米国人はオランダ人よりもカロリー摂取量は約25%多い半面、運動は少ない。つまり、生活習慣病は、通常の政策手段では対処しづらい問題なのだ。
行政による対策として考えられるのは、喫煙に対して行ってきたような働きかけかもしれない。公的な発表や広告、啓蒙キャンペーンによって、米国のカルチャーは徐々に喫煙と距離を置くようになり、1960年代に42%だった喫煙率は15%弱まで下がっている。
現在の新型コロナに関しては、米国人を脆弱にしている併存疾患を減らすためにできることは少ない。だが、より健康な生活習慣を強く奨励すれば、次のパンデミックにはもっと良く備えられる。同時に、国民の生活の質の向上や、天文学的な医療費も抑制も図られるだろう。