同氏は、「コロナにより、モノの移動に力点が移った。移動の手段化が進み、移動需要を把握するプレーヤーと移動手段を提供するプレーヤーの連携が進んでいる。今後は、モノの移動に関連する周辺分野でのビジネス創出に期待が高まる」と分析する。
ヒトの移動からモノの移動へ
Uberの第2Q(4月~6月)決算がモノの移動へのシフトを感じさせる。従来、成長を牽引してきたライドシェア(ヒトの移動)に関する売上と、デリバリー(モノの移動)に関する売上が初めて逆転した。売上の伸び率がライドシェアが約65%の減少となっているのに対し、デリバリーが100%超の成長となっている点が印象的である。同様の特徴は日本にも見られるようで、リアルの消費が30%以上減少し人の移動の減少につながっているのに対して、オンラインの消費が20%以上増加しているとのデータもある。木村氏は、「消費の中心を担うようになってきているミレニアル世代ではリアルよりオンライン消費を好む傾向がより一層強くなる。この層の取り込みは、モノの移動への対応が必須」と語る。
木村将之|デロイト トーマツ ベンチャーサポートの取締役COO
加えて、モノの移動ビジネスを拡大するUberを引き合いに、「フードデリバリー事業者もモノの移動にますます力を入れ、フードデリバリーのみならず小売店からの配送事業や個宅間配送事業を開始している。モノの移動を巡るビジネスが今後さらに活況になる」と予想している。2020年6月には、欧州フードデリバリー大手のJust Eat Takeawayが米国大手のGrubhubを約7800億で買収と発表し、Uber Eatsが競合のPostmatesを2800億円超での買収を発表するなど、モノの移動を巡るビジネスからも目が離せない。
出典:Uber Announces Results for Second Quarter 2020より
移動需要と移動提供の垂直統合、モビリティを制するのは誰か?
木村氏は、「ヒトの移動需要を把握するプレーヤーとモノの移動需要を把握するプレーヤーの派遣争いからも目が離せない」という。Googleは、Google CalenderやGoogle Mapなどをはじめとする生活関連のアプリから人の移動需要を把握しており、自動運転部門のWaymoによるRobotaxiで移動手段まで提供することを目指している。
一方で、モノの検索においては、AmazonがGoogleを逆転し(下図参照)、全米のインターネット小売りの40%以上がAmazon経由で行われているとのデータもある。Amazonは、自動運転の研究開発のカリフォルニアにおける走行実績でTop10に入っていたZoox買収を2020年6月に発表し、自動運転技術の開発を進めている。その他にも、自動運転企業Auroraへの出資、自動運転トラックを手掛けるEmbarkとの実証、買収したスタートアップの知見を活用しラストワンマイルデリバリーのAmazon Scoutの実証実験を通じて展開するなど、全方位で配送手段自動化にも力をいれているという。同氏は、「今後は、移動需要の把握と移動手段提供を連携させる垂直統合型ビジネスによる覇権争いが益々激化する」とする。